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蛇たちの「庭」制作にあたって
KURE MASAKAZU
趣味の山歩きや渓流釣りをしながらフィールドの写真を撮り始めてもう半世紀が過ぎました。撮影の対象は風景であったり、樹木や草花、そして野生の動物など、その時々に出会って気になったもの全てです。その中でも蛇たちとの出遭いはいつも「わっ!」、「おっ!」の連続で馴れることはありませんでした。でも、蛇たちとの出遭いを重ねるうちに、少しずつ彼らを観察する余裕も出てきました。それで気付いたのですが、こちらが蛇を見てびっくりしている以上に蛇も私に出遭って驚き警戒していることです。だから、私が何もしなければ蛇も何もしないし、すぐに逃げて行きます。そして蛇たちの写真を撮るようになって、初めに驚いたことは彼らの運動能力です。手も足も無いのに、藪の中を素早く通り抜け、岩の絶壁を登り、急流を滑るように渡っていく、その姿に本当に感嘆しました。蛇たちの暮らしぶりの一端を垣間見るうちに、蛇たちも普通の野生動物で自然界で必要な存在なんだと思えてきました。蛇たちがカエルやネズミや鳥を食べることでバランスが取れているんです。人が蛇を嫌う理由は幾つもあります。まず、あのクネクネとした気味の悪い動き方、うろこ、獲物を生きたまま丸呑みにするなど、いろいろあるかもしれませんがどれも人間本位の好悪の問題ではないでしょうか。
以前、山歩きの途中で出会った素敵なご夫婦と立ち話をして別れたのですが、まもなく背後から奥様の悲鳴とご主人の怒声が聞こえてきました。「キャー、来ない、消えてー」「この野郎、よくも出たな、こいつめ!」登山用の杖で地面を打つ音が聞こえました。引き返してみるとご主人は顔を真っ赤にして打ちのめした蛇を杖の先にひっかけて遠くへ投げ飛ばしていました。つい先ほど山や自然の素晴らしさを語っていたご夫婦が一匹の蛇の出現をこれほど怒るとは、私はその時「何か違う」と思いました。自宅の庭に「出た」ならともかく、ここはずっと大昔から蛇たちが生きてきた蛇たちの「庭」ではないかと。
蛇の写真を撮っていると「蛇が好きなんですか?」とよく訪ねられます。最近は誤解を恐れず「好きです」と答えています。ただし、自宅の居間で蛇を飼ったり、首に巻いたり、懐に入れたりする趣味はありません。あくまで、野山を元気に這いまわる蛇たちが好きです。