イナミンカとディッグ・ツリーを目指して
--バーク探検隊悲劇の地へ--



Oodnadatta Track

ウナダッタ・トラックの入り口。スチュアート・ハイウエイを離れ、リンドハーストまで約700キロの無舗装路へと入る。ご覧の通 り、サービス(ロードハウス)はほぼ200キロおきにしかない。途中には灼熱の荒野が広がる。食料と飲料水は既に積込み済み、燃料を満タンに、タイヤの空気圧をチェックして、さあ冒険旅行の始まりだ。
Clickで拡大)

ダートの入り口や分岐点には写 真のような看板が設けられていて、区間ごとの道路状況を把握することができる。雨などで通 行できない場合には「Closed」と掲出される。それぞれの表示部分(写真の「Open」の部分)は南京錠で施錠され、いたずらで表示が変えられないようになっている。それだけ重要な情報、命にかかわる看板である。
Clickで拡大)

ウナダッタ・トラックを走るのは5年ぶり。一見変化のない大荒野が広がっているだけのように見えるが、ポイントごとに前回の記憶は鮮明に蘇った。ワシにとって前回の旅は、何もかもが最高だった忘れられない旅の一つである。5年前の夢のかけらを一つ一つ集めながら荒野を下った。

【Nikon F5A + Ai'D Fisheye Nikkor 16mm F3.5】
「A Taste Of The Outback」まさにこの言葉通 り、ウナダッタ・トラックの旅はアウトバックのテイストがいたるところに溢れている。
Clickで拡大)

スチュアート・ハイウエイから200キロでウナダッタの集落に着く。写 真はシンボルのピンク・ロードハウス。店番のフランス訛のおねえちゃんに、アウトバックの一人旅が如何に危険かを散々に説かれる。GPSの救難ビーコンを積んでいると言ってようやく開放された。しかし、タイヤの空気圧をチェックしろと口喧しい。今朝調べたばかりなのに...。
空気圧のチェッカーは工場で貸してもらえと言われ、店の隣の工場(写 真左側の扉が開いているところ)に回った。以下の写真は本邦初公開(恐らく)ピンク・ロードハウス工場内部の写 真である。

【Nikon F5A + Ai'D Fisheye Nikkor 16mm F3.5】
 
Clickで拡大)

オールド・ガン鉄道と併走するウナダッタ・トラックの沿道には鉄道関連の遺構が多く見られる。その中でも最大のものがアルジェブッキナ橋 Algebuckina Railway Bridgeである。ウナダッタ・トラックが横切る数多くの川の中で最も大きいニールズ川 Neales Riverに架かる全長578mの鉄橋はトラックからもその威容を遠望できる。今回はその機会がなかったが、早朝もしくは夕刻に気合いを入れて写 真を撮ってみたいものだ。
Clickで拡大)

ウナダッタから南へ200km、3時間もあればウイリアム・クリークに到着する。しかし、ワシは分岐点で道を間違えてウナダッタからクーバーピディへ抜ける道を80kmも走た。長らく旅をしているが、こんな初歩的な間違いをするのは初めてのことである。慌てて引き返すが200km近い回り道をしてしまった。「オーストラリア最小の街(人口16人)」、「世界で一番孤立した場所」ウイリアム・クリークには黄昏が迫っていた。

【Nikon F4 +
Ai AF-S Zoom Nikkor ED 17-35mm F2.8D (IF)
Clickで拡大)

極端に通 行量の少ないウナダッタ・トラックでは、飛行機もトラックを使用する。アデレードからのセスナがウイリアム・クリーク・ホテルで給油を行い、そのままトラックを走って駐機場へと向かっていった。明日の朝、エアーズッロックに向かって飛び立つそうだ。

【Nikon F4 +
Ai AF-S Zoom Nikkor ED 17-35mm F2.8D (IF)
【Nikon F4 + Ai AF-S Zoom Nikkor ED 17-35mm F2.8D (IF)
Clickで拡大)

ウイリアム・クリーク・ホテルに併設されたバーは他のアウトバックのそれと同様に旅人が貼り付けて行った名刺をはじめ、様々なもので壁から天井まで埋め尽くされている。ワシは5年前に貼った自分の名刺を必死で探したが、見付けることができなかった。後から来た名刺に埋められてしまったのだろうか。
Clickで拡大)

ウナダッタ・トラックを挟んでウイリアム・クリーク・ホテルの前には公園のようなスペースが設けられ、古今いろいろなモノ(口の悪い人はがらくたと言う)が置かれている。写 真のロケットやミサイルは遙か南のウーメラ Woomeraの射場から打ち上げられた残骸と思われる。

【Nikon F4 +
Ai AF-S Zoom Nikkor ED 17-35mm F2.8D (IF)
Clickで拡大)

ホテルの前に置かれた電話ボックス。「世界一孤立した場所」にあるということは、「世界一孤立した公衆電話」ということになる。ソーラーパネルが備え付けられ、もちろん世界中と通 話ができる。
Clickで拡大)

ユーカリが影を落とす「You are at William CK.」の看板。オーストラリア各都市への道程が書かれているが、隣の集落まででも南北200km、西へ170kmの距離がある。巨大な空白の直中に自分がいることを思い知らされる。

【Nikon F4 + Ai AF-S Zoom Nikkor ED 17-35mm F2.8D (IF)

Clickで拡大)

看板の中央に表記されているアンナ・クリーク・ステーションは世界最大の牧場である。その面 積は30,100平方キロ、ベルギー一国より大きく(九州本土よりやや小さく、四国の二倍に近い) 、18,000頭の家畜を放牧している。これもまたオーストラリアの広大の成せる業である。そんな巨大な牧場を15人のスタッフで仕切っているというからこれもまた驚く。

Clickで拡大)

ウナダッタ・トラックを旅すると写 真のような手書きの標識を多く目にする。ピンクロードハウスのスタッフが多大な労力と時間を費やして旅人の便宜を図るために設置してきたものだ。エア湖の畔にまで彼らの標識は立てられている。5年前に比べ上の写 真にある円形の看板が増えている。いずれにせよ彼らの献身には頭が下がる。

【Nikon F5A + Ai'D Fisheye Nikkor 16mm F3.5】

Clickで拡大)

ウイリアム・クリークの南70kmにカワード・スプリングスがある。この大荒野の中には場違いなようにこんもりと木が生い茂り、天然の温泉(水温は低い)が湧いている。温泉の周囲には湿地まである。これらは1886年に掘り抜き井戸が掘られたためにできた人工のものであるが、この灼熱の中、一息つくには格好の場所である。

カワード・スプリングスには簡易のキャンプ施設も設けられており、その気になれば満天の星空を見上げながら露天風呂に入るなんていう趣向も楽しめる。

Clickで拡大)

カワード・スプリングスの温泉。幅1.5m、奥行2mほどの木製の風呂桶?が設けられている。無人のゲートでポストに入園料を入れれば誰でも入浴できる。肩くらいまでの深さがあり、砂地の底から豊富な湧水が絶えず噴き出している。

【Nikon F5A + Ai'D Fisheye Nikkor 16mm F3.5】

セルフタイマーで自分撮り(この写 真は拡大しません)。プールがそれほど大きくないことがお分かりいただけよう。まだ昼まで時間はあるのに、太陽は容赦なく照りつけ、肌を刺し、プールの取っ手は触れないほど熱くなっている。逃げ場のない暑さの中、水の中が唯一快適に過ごせる場所である。

【Nikon F5A + Ai'D Fisheye Nikkor 16mm F3.5】

Clickで拡大)

カワード・スプリングスのプール周辺には椰子などが小さな林を作っている。その枝には夥しい数のコレラ(オウムの仲間)が集まっていた。水のあるところには命がある。車に驚き一斉に飛び立つ様は壮観だった。

Clickで拡大)

カワード・スプリングスから程無い距離にマウンド・スプリングスがある。地下の伏流水が長い時間をかけて地上に湧き出している場所だ。5年前に訪れた時はきれいだった水面 だが、季節柄か今回は多くの浮遊物が浮いていた。それにしても暑い、陽を遮る物が何もない大荒野をワシは早々に立ち去った。

【Nikon F5A + Ai'D Fisheye Nikkor 16mm F3.5】

● 2001年の写 真 >>>

Clickで拡大)

エア湖サウスは5年前と同様に乾いていた。大荒野の無尽と茫漠に何も変わりはないが、ただ一つ、エア湖サウスを告げる看板が新しい物に取り替えられていた。個人的には昔の看板の方が趣があっていい。5年前の光景は最早、写 真と記憶の中にしか存在しない。

● 2001年の写 真 >>>

Clickで拡大)

アルベリー・クリーク Alberrie Creekのオブジェ。5年の歳月は様々な人工物の姿を変えていたが、このオブジェは前と変わらずに健在だった。

● 2001年の写 真 >>>

Clickで拡大)

今日の目的地・マリーに到着。ガソリンスタンドのおばさんに「暑いね」と声をかけると、「今日は43度、3月まではこんな調子よ」と返される。旧鉄道駅で朽ちるに任せられていたオールド・ガンの機関車二両が塗装を施されピカピカになっていた。 残念ながらライトや窓ガラスは失われたままだ。

● 2001年の写 真 >>>

Clickで拡大)

マリーの街にはオールド・ガンの線路がまだ残っている。かつてこの線路はウナダッタを通 ってアリス・スプリングスまでつながっていた。二度と列車の走ることのない線路は街の北の端で荒野の無限に消えていた。

【Nikon F4 +
Ai AF-S Zoom Nikkor ED 17-35mm F2.8D (IF)

Clickで拡大)

三両が保存されているディーゼル機関車の内、北側に少し離れて置かれた一両は再塗装されることなく、朽ちるがままに放置されている。しかし、皮肉なことに、この寂れたマリーの街では錆びたままの姿の方が雰囲気にとけ込んで見える。近づくと漂ってくる油の臭いは、「まだ生きているぞ」という機関車の主張だろうか。

【Nikon F4 + Ai AF-S Zoom Nikkor ED 17-35mm F2.8D (IF)

Clickで拡大)



2006.12.17 掲載
2006.12.25 コンテンツ追加
2007.01.15 コンテンツ追加
2007.01.27 コンテンツ追加