ノビル

「いざ児ども 野蒜(ノビル)摘みに 蒜摘みに・・・」・・・・古事記

古事記に応神天皇の歌として上記の記述があるようにノビルは万葉の時代から美味しい食材であった。
万葉集に次の歌がある。 「醤酢(ひしはす)に 蒜(ヒル)搗き合てて 鯛願う 我にな見えそ 水葱(ナギ)の羹(あつもの)」
歌の意は 「酢味噌(すみそ)和えのノビルと、鯛を食べたいと思っているのに、ナギのお汁なんか見せないで下さい!」 と、ノビルを鯛と並ぶ美味しい食材として扱っている。
現在でも鱗茎をゆがいて酢味噌(すみそ)で食べるとネギに似た辛味とニラに似た香りのする美味しい山菜となる。
ノビルは中国から渡来した史前帰化植物で、食材と同時に民間薬としても広く用いられ、乾燥したものを煎じて飲めば血を補い、よく眠れ、又鱗茎をつぶして塗ると虫刺され、かゆみ等の薬になった。
ノビルの名の由来は野に生える蒜(ヒル)から来ており、 蒜(ヒル)はネギ、ニラ、アサツキ、ニンニク等、においがあって食用とするネギ属の総称を意味し、食べるとヒリヒリする事から来ていると言われている。

ネギ             ニラ           アサツキ

仲間のネギやニラやアサツキは花をいっぱい付けるが、ノビルの場合は花頭がほとんどムカゴ(珠芽)になってしまい、花を付ける事は稀である。
薄紫がかった白い花を咲かせるが写真のように三つも四つも花を付ける事は珍しい。

ノビル

散歩道のあちこちで自生しているユリ科ネギ属の花であるが、この花を見ていると、古事記や万葉集の歌を思い出し、万葉の食卓に思いをはせさせる。
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