ムラサキケマンとキケマンとエンゴサク

ムラサキケマン

桜の花が終わる頃、ムラサキケマンと呼ばれる面白い花の付き方をする赤紫色の花があちこちで目に付くようになり、山裾や山林では同じ形の黄色のキケマンや青みがかったエンゴサクの仲間に出会う。
いずれもケシ科キケマン属の花で、その独特の形が面白い。

ムラサキケマン        ムラサキケマン        シロヤブケマン

ミヤマキケマン        ミヤマキケマン         キケマン

ヤマエンゴサク

この内、散歩道でよく目立つのがムラサキケマンで、日本全土に分布し、別名ヤブケマンとも呼ばれ、藪のような日陰や少し湿った場所を好み、散歩道のあちこちで見られる。 ムラサキケマンの変種の白色のものをシロヤブケマンとよんでいる。
このムラサキケマンと形がそっくりで黄色い花を付けるキケマン(黄ケマン)も同じ頃に花を付け山裾を彩る。
キケマンにも海岸線の山側で多く見られるキケマンと近畿以北の山で見られるミヤマキケマンがあり、ムラサキケマンのように何処にでも咲いている花ではないが、この地方でも少し山に入ればミヤマキケマンに出会う。
キケマンがケシ科キケマン属を代表し、ムラサキケマンもエンゴサクも同じ属の花である。

ケマン(華鬘)はもともと花を糸で連ねて輪に結んだアクセサリーの事で、それが仏教に取り入れられて仏具や仏殿の欄間(らんま)等の装飾具として華鬘と呼ばれるようになった。 
花の形、あるいは一本の茎に花が連なっている様子がケマン(華鬘)に似ている為、ケマンソウ(別名タイツリソウ)と呼ばれる花があって、これがムラサキケマンやキケマンの名前の基になった。

 

ケマンソウ(華鬘草)

一つの茎に連なって咲く様子が似ている事から、紫色のケマンソウあるいは黄色のケマンソウと名付けられたようである。
ムラサキケマンやミヤマキケマンは葉や茎を傷つけるといやなニオイを発し、全草にアルカロイドを含む毒性の植物で、間違って食べると嘔吐や麻痺を起こすが、ウスバシロチョウの幼虫にとっては重要な食草となり、カタクリやスミレと同様、種にアリの好物の’エライオソーム’と言う成分が付いていて、アリに種を運ばせる。
一方
エンゴサク(延胡索)は漢方薬の名から来ており、地下の塊茎を乾燥させたものが鎮痛剤となり、有名な胃腸薬の原料ともなる。 エンゴサク、エゾエンゴサク、ヤマエンゴサク、ジロボウエンゴサク等数種類あるが、本州ではヤマエンゴサクが多く、葉の形は変異が多い。 又、花の色も大半が青紫色であるが、ムラサキケマンのように赤みがかった花をつけるものもある。
ムラサキケマン、キケマン、エンゴサクはその独特の花の形と付き方で目を引く花である。

次へ

最初のページへ戻る