ツルニチニチソウとテイカカズラ

ツルニチニチソウ

春の土手を散歩すると、一面に青紫色の花を付けたツルニチニチソウの群落に出会う。 
つる性で、日ごとに新しい花に咲き代わるのでツルニチニチソウ(蔓日々草)の名があり、又ツルギキョウとも呼ばれ、蔓はきわめて旺盛に伸び、際限なく広がる。
ヨーロッパ原産で、明治時代、園芸種として入ってきたが、繁殖力が旺盛で耐陰性が強く、又、砂防用にも適しているので土手に植栽もされ、日本全国の野原や土手で野生化し、いたるところに見られる。
ツルニチニチソウと、ツルニチニチソウより花が少し小ぶりで耐寒性の優れたヒメツルニチニチソウの二種類がある。
外観の大きさ以外にツルニチニチソウのガクに毛があるのに対し、ヒメツルニチニチソウには毛が無い、あるいはヒメツルニチニチソウは匍匐枝から根がでるが、ツルニチニチソウは出ない等の違いは有るが、一見では分からない。 この地の散歩道でよく見られるのはツルニチニチソウのほうである。

ツルニチニチソウ

ヒメツルニチニチソウ

ツルニチニチソウはアルカロイドを含む為、有毒であるが、ヨ−ロッパでは催吐薬として民間で使われ、抗癌剤としての効果もうたわれている。 一方、ヒメツルニチニチソウの成分には神経、精神症状を向上させる効果や、脳の血の浄化の効果があるとされ、ハ−ブテイとして用いられ、年配の人の痴呆症や物忘れに有効とされる。
又、両者共、常緑で冬にも枯れない為、不死の力や魔力を持っていると考えられ、古くからヨーロッパでは 「悪い物を寄せ付けず繁栄と幸福をもたらす花」 と言い伝えられている。
ツルニチニチソウは外来種であるが、ツルニチニチソウと同じキョウチクトウ科の植物で同じ様にツルを延ばして木や崖を這い登る日本古来からの植物がある。 テイカカズラ(定家蔓)である。 こちらは白い花をつける。

テイカカズラ

テイカカズラ(定家蔓)はツルニチニチソウの花が終わる初夏の頃、山裾で花を付け始める常緑のつる性植物で、花が咲き始めると甘い香りを発する。
この花の名の由来は実に興味深い。 能の謡曲に 「定家」 があり、歌人として有名な藤原定家が後白河法皇の第三皇女である式子内親王を慕い、内親王が死んだ時、蔓(ツル)となってその墓石に絡みついた筋書きであるが、それがこの花の名の由来であるとされている。
式子内親王の歌に 「玉の緒の 絶えなば絶えね ながらえば 忍ぶることの 弱りもぞする」 とあり、実際に藤原定家と恋仲であったのかも知れない。
古くはマキノカズラと呼ばれ、古今集に 「み山には あられ降るらしと 山なるマキノカズラ 色づきにけり」 の歌があり、日本古来の花である。
ツルニチニチソウとテイカカズラは外国種と日本種の違いはあるにせよ、春から初夏にかけて日本の野山で目立つキョウチクトウ科のつる性の植物である。

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