シュンラン

「春蘭や 雨をふくみて うすみどり」・・・・久女

現代ではシュンランの名前を聞いてもすぐ分かる人は少なくなってきているが、つい最近まで生活に密着していた花である。
花を塩漬けにしたラン茶は結婚式等のめでたい行事で供され、根は粉末にしてアカギレ用のハンドクリームとなり、蕾はサラダ、酢の物として使われた。
伊藤左千夫の小説 「野菊の墓」 の中で政夫と民子がシュンランをアカギレの薬にすると会話する場面がある。 もっとも、アカギレといっても分からない世代が増えつつあるので、シュンランの名前が遠くなっていくのも仕方の無い事かもしれない。

東洋蘭のひとつで、漢字で春蘭と書き、蘭の季語は秋であるが、春咲くのでこの名がある。 ランの名前も中国の発音から来ており、当初はラニと呼ばれ、万葉集にもラニの名で記述がある。
洋蘭のような派手さは無いが、その独特の姿が好まれ、彫り物や書画の格好の題材となった。
日本に古くから自生している花で、花弁の斑点や皺から、ホクロ、ジイバアの別称がある何処の野山にでも見られた花であったが、開発や乱獲がたたり、最近はめっきり少なくなった。

それでも未だ、ところどころで見られ、筆者の庭にも植えた覚えは無いのに、運んできた土の中に混じっていたのか、毎年律儀に咲き、なかなか強い花である。


日本の他、中国、韓国に自生し、その独特の姿で自己主張するラン科の花である。

次へ

最初のページへ戻る