スズシロとノダイコン

「セリ ナズナ オギョウ ハコベラ ホトケノザ スズナ スズシロ」 という春の七草の記述が1300年代に書かれた有名な源氏物語の注釈書 「河海抄」 の中にあり、その後 「これぞ七草」 が付け加えられられて和歌の形に詠まれたが、その最後を飾るスズシロは現代でいうダイコン(大根)の事である。
春の七草と言えば旧暦一月七日に無病息災を願って食べる七草粥が知られているが、もともとは中国から伝わったコメやアワの七穀粥が転じたものとされ、一般に定着したのは室町時代から江戸時代にかけてとされる。 江戸時代には五節句のひとつとして旧暦一月七日に将軍以下が七草粥を食べ、諸大名がこれに参賀したと言われている。
スズシロ(ダイコン)の原産地は中国、コーカサス地方とされ、日本には中国から渡来した。
通常、花が咲く前に食べてしまうので、都会で花を見ることは難しいが、この地方では作りすぎの為か、種を取る為か、あちこちで花が見られる。
アブラナ科ダイコン属の花で、一般にアブラナ科の花は黄色が多いいが、この花は紫を帯びた白である。

食用の大根の花

ダイコンの野生種がノダイコン(野大根)で、ハマダイコン(浜大根)とも呼ばれ、海から遠く離れたこの地方ではなかなか見られないが、4月の中旬、日本各地の海岸線に、行けども行けども真っ白な野の花畑を作る。
ダイコンが逃げ出して野生化したものと言われたり、あるいはノダイコンが改良されてダイコンになったとも言われるが、根はダイコンのように大きくは無く、花のみのダイコンである。

ノダイコン(ハマダイコン)

ダイコンの名の由来はオオネ(大根)の音読みから来たものであるが、その前の呼び方のスズシロのスズは古語で青を意味し、シロは白でこれがスズシロの名前の由来となっている。 
古代から現代までずっと食べられてきた数少ない野菜のひとつで、消化を助けるジアスターゼを多く含む為整腸作用があり、健康食品としても利用されてきた。 大根役者の由来も 「食中毒を起こさない」 から 「当たらない」 になったとされる。
春の七草の内、現代でも日常食べられる野菜となったのはこのスズシロ(大根)とスズナ(蕪)だけであるが、これも改良や肥料を与える事で現代の姿になったものであり、放っておけばノダイコンになってしまう。

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