ハコベいろいろ

ウシハコベ

「カナリアの 餌に束ねる ハコベかな」・・・・子規

ハコベは春の七草の一つとして食用にされてきた花であるが、むしろ小鳥が好む花として世界的にも名がある。
スズメグサ、ヒヨコグサとも呼ばれ、英名でも 「chick−weeds」 と鳥の餌を意味する言葉が使われおり、子規の句のように小鳥の餌として知られている。
漢方では血の道をつかさどる薬草として有名で、又、塩に混ぜて焼いたハコベ塩は江戸の頃から歯磨きに使われている。 歯槽膿漏を予防する昔の人の知恵である。
散歩道でよく見られるハコベにはコハコベ、ミドリハコベ、ウシハコベがあるが、普通、ハコベと呼ばれるのはこの内、コハコベ、ミドリハコベの事で、ウシハコベは学術的にはハコベとは別に扱われている。
古来から日本に自生し春の七草に用いられたハコベはミドリハコベとされるのが一般的であり、コハコベは比較的近年の帰化種とされているが、コハコベも史前帰化植物であるとの説もあり、良く分かっていない。
ただ、三者とも良く似ており、区別を付けることはなかなか難しいが、表題の写真や左下の写真のウシハコベは少し花が大きく、柱頭が五つに分かれており、ハコベは三つに分かれているので、柱頭を見れば両者の区別は簡単である。
一方、ミドリハコベとコハコベとは素人では区別が付きにくく、ミドリハコベは名前の通り茎が緑色でコハコベは褐色、又、雄しべの数がミドリハコベの方がコハコベより多い事等の違いはあるが、なかなか判断は難しい。
散歩がてら花を楽しむには三者ひっくるめてハコベで差し支えないように思われる。

ウシハコベ           コハコベ          ミドリハコベ

春早く土手が一面に緑になる頃この花が現れるが、島崎藤村が 「千曲川旅情の歌」 の中で 「・・・・緑なすハコベは萌えず 若草もしくによしなし しろがねの衾の岡辺 陽に溶けて 淡雪流る」 と詠ったように、雪がなくなり、土手一面が緑になるとハコベの季節になる。
世界各地に生殖する原産地不明の花で、小さいが可愛く、花びらは五枚であるが切れ込んでいる為十枚に見える。
又、山裾に行くと、ミヤマハコベやサワハコベが見られ、花がウシハコベを含めた通常のハコベよりずっと大きく、見栄えがする。

ミヤマハコベ

サワハコベ

通常のハコベ

ミヤマハコベはハコベと同じく五花弁の花びらの切れ込みが深いが、ハコベのガクが花びらより長いのに対し、ミヤマハコベのガクは花びらより短く、又、サワハコベは花びらの切れ込みが浅いのですぐそれと分かる。
ハコベの名は平安時代に書かれた日本最古の草本書 「本草和名」 に波久倍良(ハクベラ)とあり、これが転じてハコベ(ラ)となったが、波久倍良の意味は良く分かっていない。
洋の東西を問わず小鳥の餌として名のあるナデシコ科の花である。

次へ

最初のページへ戻る