センボンヤリ

センボンヤリの名は10年程前、野の花に興味を持ち始めた頃、その道の先輩から教わったのが最初であった。 
近くの古墳程度の大きさの観音山で春を告げ、秋にも閉鎖花ではあるが花をつけ、一年の間に二度も花をつけるという珍しい野草であるとの事であった。 
翌年の春、観音山で探してみたが見つからず、それ以来毎年探しても絶滅したのかその姿を見る事はなかった。
ところが、たまたま山梨県の八重山に登る機会があって、そこの案内板にセンボンヤリの写真があり、念願の花に会うことがやっとかなった。 思ったより小さな花ではあったが、長年あこがれていただけに感慨ひとしおであった。

春のセンボンヤリ

秋のセンボンヤリ

センボンヤリはキク科センボンヤリ属の多年草で別名ムラサキタンポポとも呼ばれ、写真に見るように舌状花の裏側が紫色を帯び、葉の形を含め全体がタンポポに似ている。
春型の頭花には縁に舌状花、中央に筒状花が付き、花の大きさは1.5cm程度で、花茎はわずか10cm程度と小さな花である。 一方、秋型の花茎は30−60cmと大きく、頭花は閉鎖花で筒状花のみとなる。 この筒状花は開かず総苞片で包まれたまま中の花が自家受粉を終え、果実となり、写真のように冠毛が伸びてくる。
長い花茎の筒状花が道端に沢山並んだ姿は穂先に飾りを被せた大名行列の槍が何本も立ち並ぶ様子を連想させて、それがセンボンヤリ(千本槍)の名の由来である。
上記の写真は本数が少なかったので、残念ながらセンボンヤリ(千本槍)のイメージには程遠い。
センボンヤリは山地の日当たりの良い林縁に生え、春には他家受粉、秋には自家受粉をして子孫を残そうとする植物の知恵を持ったユニークな花である。

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