クララ

6月も半ばを過ぎる頃、散歩道の途中の野原に不思議な形の花をいっぱい付け、草本ではあるが、小さな木のような大きさのクララと呼ばれるマメ科の花が現れる。
クララの名前からヨ−ロッパ辺りからの帰化種を連想してしまうが、れっきとした在来種で、日本、中国、朝鮮半島に分布する古来から有名な薬草である。
漢方名を苦参(くじん)と呼び、2000年前の漢代に書かれたとする薬物を扱った最古の書物 「神農本草経」 にも記述があり、最近ヒットした朝鮮王朝の宮廷女官を描いたテレビ番組 「チャングムの誓い」 にも度々登場する。
根を乾燥したものが 「苦参(くじん)」 として健胃、利尿、解熱、鎮痛剤になると同時に、乾燥させた茎葉を煎じた液で、汗も、疥癬、水虫の薬となり、又、農産物害虫、牛馬の皮膚寄生虫、便所の蛆虫(うじむし)の駆除に、あるいは、乾燥葉を敷物の間に入れて蚤(のみ)を防ぐ等、生活に関連した民間薬として古くから使われていた。 茎、皮から繊維や織物、紙も作られたりした大変有用な植物であった。
現代でも鎮痛、解熱の漢方薬として、又、生ゴミの害虫退治や臭い消しに、はたまた肌の若さを保つ為の化粧水に入れられたりしている。
名の由来は根汁をなめると頭がくらくらするほど苦いので眩草(くららぐさ)がクララになったとする説が有力で、牧野富太郎博士の説である。 別名をクサエンジュと呼ばれ、槐(エンジュ)の木に似ている事から来ている。
この苦味の原因はこの植物に含まれるマトリン等のアルカロイド系の有毒物質で、これにより害虫の呼吸神経や運動神経を麻痺させたり、あるいは鎮痛剤として用いられてきたと考えられるが、毒性が強く、素人療法は危険である。


普段は何となく不思議な花だな程度で見過ごしてしまうが、 「チャングムの誓い」 に登場したり、昔の旅人が道中の ’しゃく’、や ’さしこみ’等の応急薬に使ったと聞くと興味をそそられる花である。

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