ヤブツバキとサザンカと茶

ヤブツバキ

冬から春にかけて、花の少ない季節に散歩道で目立つのはなんと言ってもヤブツバキやサザンカの小高木である。 よく見れば、お茶の花もところどころに咲いている。 ヤブツバキもサザンカも茶もツバキ科ツバキ(カメリア)属に属し、いずれも似た花を付ける。
茶はカメリア・シネシス(中国のカメリア)と呼ばれるように原産地は中国で史前帰化植物とされるが、ツバキやサザンカは学名でカメリア・ジャポニカ、カメリア・サザンカと呼ばれる様にいずれも日本原産の花である。
ツバキは古事記や日本書紀にも登場し、万葉の頃は既にツバキの名で呼ばれ、歌にも読まれ、 「巨勢山の つらつらツバキ つらつらに 見つつ偲はな 巨勢の春野を」 等の歌があるが、サザンカは室町時代の著書 「尺素往来」 に初めて登場する。
いずれも江戸時代に品種改良が進み、種々の品種が作り出され、日本から世界に広がった。 欧米で改良されたツバキが洋種ツバキとして逆輸入されたりしている。 一方、茶の方は葉が主体なので花は白一色である。
ツバキの原種は青森以南に自生するヤブツバキと日本海側の積雪地帯に自生するユキツバキがあり、これらから種々の改良種が作られ、一方、サザンカは四国、九州等の日本西部の山地に自生していたものから品種改良され、各地に広まったものである。
その意味ではこの地方ではツバキは自生種が見られるものの、サザンカは自生種では無く、園芸用に改良されたものが植栽されている。  茶は農家の庭先や畑から逃げ出したものであろう。

ヤブツバキ

サザンカいろいろ

茶の花

ツバキもサザンカも茶も花は一見同じように見え、茶の木は小さいのですぐ分かるものの、ツバキとサザンカは区別が難しい。 咲く時期がサザンカのほうが早く、冬に咲くのに対し、ツバキの方はどちらかと言えば春である。 又、ツバキの花は基部が合着して花弁は散らず、そのままの形で落ちるのに対し、サザンカは花弁が散る。 「山茶花(サザンカ)や 日のあたりゆく 軒の霜」 と室生犀星が咲く時期を、 「落ちざまに 水こぼしけり 花椿」 と芭蕉が花の散り方を詠んでいる。
ツバキが古くから親しまれてきたのはツバキの種子が油を大量に含んでおり、椿油として灯明、髪の手入れに使われ、又、漢方の生薬名で 「山茶」 として乾燥した花が滋養、強壮、健胃、整腸に用いられ、葉は切り傷、おでき等にすりつぶして塗布された事等による。 一方、サザンカは観賞用が主で、首が落ちると言う意味でツバキを嫌う武家屋敷等で庭に植えられたとも言われる。
ツバキの名の由来は諸説あり、葉に光沢がある事から 「艶葉木(ツヤハキ)」、 「津葉木」、あるいは「照葉木」、 葉が厚い事から 「厚葉木(アツバキ)」、等いろいろである。 漢字の椿は春に咲く木の意味で後世作られた字で、漢名は 「山茶」 である。
サザンカ(山茶花)もツバキの漢名 「山茶」 から来ているとする説が有力でいずれも茶に関連しており、同じ仲間である。  

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