タケニグサ

山崩れあとの磧(かわら)や竹煮草・・・・黙興

畑の周辺や道路の法面、山崩れ跡のような地表の安定していない所にいち早く進出する植物群を先駆植物と呼んでいるが、タケニグサはその代表的な植物で、上記の句のように山崩れ跡、あるいは町中(まちなか)の造成地等にしばしば顔を出し、その大きな異様な姿で人目を引くが、雑草が生い茂り始めると先駆植物の常としてその姿を消す。
柳田國男は 「野草雑記」 の中で 「例えば植民地の最初の自然移民などの様に、ここしばらくの盛りを息づく」 と書いている。
大きくなると2m近くに達し、菊の葉を大きくしたような異相の葉を付け、日本の植物のようには見えないので昔の人はチャンバギク(占城菊)と呼んだ。 チャンバとは現代のベトナム周辺にあった王国の名前である。
南蛮風の風体と茎が白い粉におおわれている様子を北原白秋は次のように歌っている。 「白南風(しらばえ)の 暑き日照りの 竹煮草 粉にふきいでて いきれぬるかも」


日本人の好みに合った植物ではないが、海外では園芸植物として珍重され、これほど国内外で評価の分かれる植物も珍しい。
名前の由来は諸説あって、竹似草と書いて中空の長い茎や全体の様子を竹に見立てたとする説や竹煮草と書いて竹細工職人が竹を軟らかくする為にこの草を入れた湯で煮たとする説があるが、後者の説は怪しいとするのが一般的になっている。
ササヤキグサの別名もあり、結実すると2cmぐらいの果実が多数付き、果実の中の種子が風に吹かれて音がする事から付いたとなんともロマンチックな命名であるが、そんな音なんかするはずが無いと言う無粋な人もいて論議が分かれる。

タケニグサの果実

ケシ科の毒草で、茎や葉を折ると橙黄色のなめると苦い乳液が出るが、これにアルカロイド成分が含まれており、内服すると中毒を起こす。
一方、この液を皮膚病、たむし、水虫の患部に直接塗ると薬となり、漢方でも全草を乾燥させたものを消腫解毒に用いる。

帰化種のように見えても日本に古来からある花であり、7月半ば頃、山崩れが起きた後の斜面等を真っ白に染めるが、町の中の造成地にもしばしば顔を出す先駆植物の代表である。

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