ショウマいろいろ

トリアシショウマ

夏の野山を散策すると、アスチルベに似た華麗な花を咲かせるショウマと名が付く植物群に出会う。 表題の写真がそのひとつであるトリアシショウマで、花期には山裾の暗がりの中に真っ白な花がひときわ目立つ。
この地方の人はアスチルベの事をショウマと呼ぶが、ショウマと言う花が有るわけではなく、キンポウゲ科のサラシナショウマから、ユキノシタ科のトリアシショウマやアカショウマ、チダケサシ、又、バラ科のヤマブキショウマ迄種々のショウマがある。 
アスチルベはユキノシタ科の日本原産のアワモリショウマとチダケサシの一種である中国原産のオオチダケサシを交配させてヨーロッパで園芸用に創作された花が里帰りしたものであり、ショウマ類がアスチルベのような花を付けるのは当然の事である。 現代では園芸種のアスチルベが良く知られるようになり、ショウマ類は影が薄いが、この地方の人々はアスチルベの事を今でもショウマと呼んでいる。
ショウマ類はトリアシショウマやアカショウマ、チダケサシいずれもアスチルベに似た花を付け、又、ヤマブキショウマも科こそ違え似た花序の花を付ける。

サラシナショウマは少し全体像が異なるが、花序の付き方は似ている。

アスチルベ         トリアシショウマ         アカショウマ

チダケサシ         ヤマブキショウマ      サラシナショウマ

ショウマの名の由来は根を漢方の薬の 「升麻(ショウマ)」 にするサラシナショウマが基本になっており、花の花序が似て根茎が赤い事からアカショウマ、若芽が出た時の形が鳥の足に似ている事からトリアシショウマ、葉が山吹に似ている事からヤマブキショウマ等々名が付けられた。 サラシナショウマは若葉を晒(さら)してアクを取って食用にし、根を漢方薬のショウマにする事からこの名があり、他のショウマ類よりすこし遅く、秋に近くの山裾に群生する。( 「サラシナショウマとショウマ類」 の項参照)
チダケサシは乳茸刺と書き、信州の人々がこの茎に乳茸(チダケ)を刺して持ち帰った事からチダケサシの名が付いたとされている。

ユキノシタ科、バラ科、キンポウゲ科と多岐にわたってショウマと名の付く花があり、サラシナショウマの花穂は多少異なるものの、それ以外はどれも良く似て区別が難しい。 葉の形や全体像で慣れれば区別は可能であるが、この地方の人々のようにアスチルベを含め、総てショウマと呼んでおく方が無難かも知れない。
ただ、いずれも若芽は山菜になり食べられ、中でもトリアシショウマの若芽は美味しい山菜として好まれる。
山野でアスチルベに似た花を見つけたら、 「・・・・ショウマ」 の名が付くと思えば間違いは無い。

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