ムラサキシキブとコムラサキシキブ

秋も深まると雑木林や山裾に小さな紫色の実を付けた低木がめだつようになり、あちこちの庭先にも同じ実をびっしり付けた木が目に付く。
山裾で比較的実が大きいがまばらに付けるのがムラサキシキブ、庭先でムラサキシキブの実より小さいがびっしり実を付けるのが園芸種のコムラサキシキブである。
実際にはコムラサキシキブはムラサキシキブとは近縁ではあっても別種で、実(み)は総て葉の上側に付き、葉に隠れない等の特徴がある。
夏に可愛い小さな花を付けるが、花の付き方も少し異なり、コムラサキシキブの花は葉から離れて付く印象が強い。

 ムラサキシキブ      コムラサキシキブ 

英名で 「日本の美しい実」 を意味する名前を付けられるほど日本に古来からある代表的な低木で、花も可愛らしいが、なんといっても目立つのは鮮やかな紫色の実である。 
かっては実がびっしり付く様子から 「敷実(しきみ)」 と呼ばれており、紫色の敷実が転じてムラサキシキブになったのか、その優雅な気品のある実が大宮人を連想させ、実の色が紫であることから 「源氏物語」 の作者である紫式部(ムラサキシキブ)の名を取ったのか定かではないが、現代では紫式部の漢字が当てられる。
又、コムラサキシキブの別名をコシキブと呼び、美人の誉れの高い和泉式部の娘 「小式部内侍」 の名を取ったと言われる等、大宮人との関係が深い。
いずれにしてもその気品から茶花として好まれ、又、葉は染料や薬草となり、丈夫な幹は金槌等の柄(え)に利用された。


近縁にヤブムラサキや白い実を付けるシロシキブがあるクマツヅラ科の花で、大宮人の優雅な時代に思いを馳せさせる花であると同時に派手な色で鳥を惹きつけ種子を遠くに散布させるしたたかな生存戦略を持った花でもある。

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