カントウヨメナと野菊達

カントウヨメナ

「二の峠 三の峠も 野菊かな」・・・・青畝

野菊と一口に言っても、紺色をしたヨメナ、カントウヨメナ、ノコンギク、又、白い花を付けるリュウノウギク、シラヤマギク、シロヨメナ、基本的には白であるが少し青みがかるユウガギク等、様々である。 いずれも秋の山野を彩るキク科の花であるが、古来よりひっくるめて野菊と呼ばれている。 又、ミヤマヨメナのように初夏の頃に咲く例外的な野菊もある。
どれも似ていて、色、冠毛、葉のざらつき、葉の切れ込み具合等で区別は可能であるが、素人では難しく、上記の青畝の句や、伊藤左千夫の小説 「野菊の墓」 の野菊がどの花であるか詮索する必要も無かろう。 又、ノコンギクやシロヨメナ等のシオン属はキクではないと無粋な事を言う学者もいるが、これらをひっくるめて野菊と呼んで差し支えはない。
この地方の散歩道で見られる野菊は大半がカントウヨメナであるが、それ以外の野菊も近くの古墳程度の山裾を散策すれば見つけられる。

カントウヨメナ       カントウヨメナ        ヨメナ

シロヨメナ         ミヤマヨメナ       シラヤマギク

 ノコンギク         リュウノウギク         ユウガギク

ヨメナは万葉の頃から知られ、嫁菜とも書き、ういういしい嫁のような花で、食べられる菜という事からこの名が付いた。 春の若芽は野菊の中で一番美味しく、おひたしや天ぷら等の食用になる。
万葉時代はウハギと言う名で歌にも詠まれており、 「春日野に 煙立つ見ゆ 娘子(おとめ)らし 青野のうはぎ 摘みて煮らしも」 とある。 初々(ういうい)しい若嫁が土手で菜を摘む姿を歌った歌かと思ったら、ガールハントの歌であるらしい。 ただし、ヨメナは関西に主に生育し、関東に多いヨメナはカントウヨメナといい、花はそっくりであるが食用にはならない。
又、シロヨメナと呼ばれる白系のヨメナに似た花も秋の山裾を彩るが、ヨメナ属ではなく、シオン属で、むしろ、ノコンギクに近い。 別名ヤマシロギクと呼ばれ、花はヨメナより小さい。
ミヤマヨメナはヨメナの名は付いているが、属も違い、花も秋ではなく、初夏に咲く。
又、ヨメナ(嫁菜)に対しムコナ(婿菜)と呼ばれてやはり昔から山菜になったのが白系のシラヤマギク(白山菊)である。 下部の葉が大きく、花びらが抜けているようにまばらに付くので区別が付きやすい。  又、しばしば葉の表面に虫こぶ(虫えい)を作る。

ノコンギクは野の紺色の菊の意でヨメナ属ではなく、シオン属であるが花はヨメナとほとんど同じである。
リュウノウギクは生葉を揉むと古来から有名な香料や薬である 「竜脳(りゅうのう)」 に似た香りがする事から名付けられ、葉の形を含め、野菊の中では栽培菊に一番近い。
ユウガギクはヨメナと同じヨメナ属に属し、花を揉むと柚子(ゆず)の香がする事でその名がある。 一般的には白色が多いが、青みがかったものもあり、やはり区別が難しい。
いずれも夏から秋の野原を彩る野菊達である。

次へ

最初のページへ戻る