ヤグルマギク

「函館の 青柳町こそ かなしけれ 友の恋歌 矢車の花」・・・・石川啄木

函館で啄木に強い印象を残したヤグルマギクは此処、当地でも五月の散歩道でひときわ目立ち、蜂が群れを成して集まる。 植栽されたものも多いが、半野生化して、野原、道端等、あらゆる所に咲き、そのさわやかさで散歩をする人の目を楽しませてくれる。 白、ピンク、紅色等、種々の色があるが、藍芙蓉(あいふよう)の別名があるように青紫色がこの花の身上であろう。 キク科の一年草で、花の形が鯉のぼりに付ける矢車に似ていることからヤグルマギクの名がある。
本来、原産地のヨーロッパでは、小麦畑、ライ麦畑、トウモロコシ畑に咲く野草あるいは雑草で、その為、英名ではコ−ンフラワーと呼ばれる。
ロシアではこの花とライ麦畑は切っても切れない関係にあり、民芸刺繍の図柄にはヤグルマギクとライムギの組み合わせの図案が多いそうである。
歴史的にも由緒有る花で、ギリシャ神話では傷ついたケンタウロスがこの花の葉で手当てをした伝説があり、古代エジプトの王墓からも見つかり、近世では、プロシャの皇帝ウイルヘルムがナポレオン三世を打ち破った時にこの花を皇帝の紋章に決めた為、 「皇帝の花」 と呼ばれるようになって、その後、ドイツ国花となった。


日本には江戸末期から明治の初期に渡来したとされるが、すっかり定着して野の花と入り混じって咲き、日本の自然に溶け込んでいるが、ヨーロッパ同様、時々麦畑に潜り込んで咲いているのを散歩の途中に見かける。
一般にはヤグルマソウの名で知られているが、ユキノシタ科にヤグルマソウと言う別種の植物が有り、ヤグルマギクと呼ぶほうが混乱は少ない。

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