ムギとその仲間

5月の散歩道で最も美しい風景は麦(ムギ)の穂波である。
特にビールムギの穂波は一幅の日本画の世界であるが、これを写真で切り取る事はなかなか難しく、何とかそれらしき感触で捕らえたのが表題の写真である。
一口にムギと言っても、ムギと言う固有種が有るわけではなく、一般には、コムギ、オオムギ、ライムギ、エンバクの4種類の総称をムギと呼んでおり、オオムギにも大きく分けると、食用の六条大麦とビールや焼酎等の酒に使われる二条大麦の二種類があり、二条大麦の事を一般にビールムギと呼んでいる。
麦類は小アジアのコーカサス地方周辺に起源を持ち、中国にも紀元前四世紀には伝播していたと考えられ、日本にはニ−三世紀に中国から伝わり、最初に小麦、その後、大麦等が入ってきたようである。
いずれもイネ科の植物で、5月には写真下のようなイネ科特有の小さな花を付ける。

麦の花

ムギの名の由来は穂のノギ(実の先に付いている針状の毛)が群(む)れている状態、つまり、ムレノギからムギになったとする説があるが、はっきりしない。
この時期にはいわゆる麦以にも、カラスムギ、イヌムギ、ネズミムギ、ホソムギ等のムギと名の付く植物の新緑が田や野原を彩るが、やはりイネ科の植物で、ムギに似ていて食べられない麦と言う事で、カラスやイヌやネズミの名が付いている。

 カラスムギ         イヌムギ          ネズミムギ

カラスムギは麦類と同じ頃日本に帰化したと考えられ、この栽培種がエンバクでオートミル等の食用にされる。
イヌムギは南アメリカ原産の帰化植物で、明治時代牧草として入ってきたものである。
ネズミムギやホソムギはヨーロッパ原産の牧草でやはり明治時代に帰化したものであるが、ネズミムギとホソムギは雑種が多く、同定が困難である。

麦類の小さな花は野の花としては全く目立たないが、ビール麦の穂波は一幅の日本画の世界であり、カラスムギ達は晩春の土手を彩って 散歩を楽しむ人達にとっては花より勝る風景である。

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