ミツマタ

ミツマタ(三椏)は早春、その華やかな花で山裾を散歩する人の目を惹きつけるが、コウゾ(楮)、ガンピ(雁皮)と共に和紙の原料として有名な植物である。
日本の製紙技術は600年代の始め高麗僧によってもたらされたとされ、もともとは麻の繊維が使われていたが、700年代の前半にはコウゾによる紙すきが行われ、次いで700年代後半にガンピでの製紙が始まった。 ミツマタで紙をすくようになったのはずっと遅れて1780年代の天明の頃とされている。
特にミツマタは強くて艶が有り、栽培が容易な事から、明治12年大蔵省造幣局が紙幣に応用し、以来日本の紙幣の優秀性を誇っている。 その為、造幣局と契約した栽培農家によって栽培もされている。
中国原産のジンチョウゲ科の落葉低木で、渡来時期については議論の有るところであるが、万葉集に三枝(さきくさ)とあり、これがミツマタであるとされているので、それが事実なら万葉時代には既に渡来していた事になる。
柿元人麻呂の次の一首がある。 「春されば まづ三枝(さきくさ)の 幸くあれば 後にも逢はなむ な恋そ吾妹(わぎも)」 (春が来て咲くサキクサのように 何事も無ければ又逢えますよ そんなに思い悩まないで下さい)。
ミツマタ(三椏)の名の由来も下の写真の様に枝が三つに分かれている事から来ている。

ミツマタ属には四種あり、日本で古来から自生しているのは一種のみであるが、近年では園芸品種のアカバナミツマタも散歩道の道端などで良く見られる。

自生のミツマタ

園芸種のアカバナミツマタ

ミツマタは和紙の材料、特に紙幣の材料として名があり、又漢方の生薬名で 「新蒙花」(しんもうか)と呼ばれ、解熱、消炎、及び、眼病薬としても用いられるが、花もなかなか見ごたえがある。

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