スイセン

日本水仙

「水仙や 白き障子の とも移り」・・・芭蕉

稀な冬に咲く花のひとつで、12月も過ぎてキクが盛りを過ぎる頃、散歩道のあちこちに姿を現し、可憐な姿と芳香で迎えてくれる。
地中海沿岸が原産地でヨーロッパから小アジアを経由し中国に渡り、日本には室町時代に南宋から修行僧が持ち帰ったとされ、その後日本各地で野生化した房咲きで芳香のあるものは日本水仙と呼ばれている。
この地の散歩道でも野生種が見られるが、特に、日本の海岸線では野生の群落が各地で見られ、観光名所になっている所もある。
室町時代の書物には 「雪中華」 とあり、上記の芭蕉の句、あるいは、蕪村の 「水仙や 寒き都の ここかしこ」 の句から見ても日本水仙は冬の花である。
一方、原産地の欧州では園芸用に品種改良が進み、ラッパスイセンや八重咲きのもの等、12種類程度に分類され、色等を合わせると一万種に及ぶとされる。 西洋水仙と呼ばれ、どちらかと言うと早春の花である。

西洋水仙いろいろ

スイセン(水仙)の名の由来は漢名を音読みしたものであるが、古代中国ではスイセンが水辺を好んで繁茂し、その姿や芳香から 「水の仙人」 と呼んだ事に由来する。
学名や英名のナルシサスはギリシャ神話に由来し、美少年のナルシサスが水面に写った自分の姿に恋焦がれて憔悴し命を落とした話からとされ、水辺に咲き、下向きに咲く姿が水面に自分を写すナルシサスを連想させ、彼が死んだ後に咲いていた花とされる。 ちなみに、ナルシズム(自己陶酔)、ナルシスト(自己陶酔者)はこのギリシャ神話から来ている。
一方、催眠や、麻痺の意味を持つギリシャ語から来ているという説もあり、こちらはスイセンの持つ毒性から来たものである。 日本や中国でも花の名の由来は常に諸説あるが、欧米でもそうらしい。
スイセンはヒガンバナ科の花で、種子ができず、鱗茎の株分けで増える。 鱗茎は食べると麻痺させたりする毒性を持つが、砕いて塗ると腫れ物や肩こりに薬効がある。
花の少ない冬から早春にかけて咲く貴重な花である。

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