現代では、草餅や笹団子のイメージが強いが、古来からヨモギ茶、ヨモギ酒、ヨモギ風呂、せんじ薬等、万能の民間薬として使われ、お灸に使う艾(もぐさ)もヨモギの葉から作り、又、邪気を払うとも信じられ、子供の健やかな成長を願い、雛祭りにはヨモギ餅が食べられ、端午の節句には菖蒲(ショウブ)と共にヨモギ湯が焚かれた。
漢方薬としては艾葉(がいよう)と呼ばれ、体を温め、食欲増進、止血、下痢等に効果が有るとされ、民間薬としては生葉の汁を塗り薬として切り傷、虫刺されに用いられた。
平安時代の医術書として有名な 「医心方」 には 「ヨモギは名医草という」 とある。 最近の研究では抗癌作用もあるとの事である。
茎や葉の裏には密に絹毛があり、白く、この毛を集めてお灸の材料となるモグサを作り、春の若葉は天ぷら、胡麻和え、油いため等の食用にもなる。
変わったところでは、信長が黒色火薬の原料として使った。 硝酸を含む為、純度の高い硝石を作ることが出来たからである。
このように、古くから薬草他種々の用途に使われる植物として知られ、万葉の時代には灸をすえる意味の指燃草(サシモグサ)、サセモの名で呼ばれ、百人一首に次の二首がある。 「かくとだに えはやいぶきの サシモグサ さしも知らじな 燃ゆる思いを」 「契りおきし サセモが露を 命にて あわれ今年の 秋もいぬめり」。
その後、ヨモギの名が一般的になったが、名の由来は諸説あって、「よく萌え出る草」、お灸に使う為 「よく燃える草」 、四方に繁茂する草(四方草)等があるが、定かではない。 草もちの材料になる事からモチグサとも呼ばれる。 又、仙人草、千年草、万年草の別名もあり、ビタミン、ミネラルを多く含むヨモギを食べれば若さを保てる事から来ている。
北海道以外の日本各地、北半球全域に広く分布し、地下茎で増え、地下茎から他の植物の発芽を抑制する物質を分泌する。 自分の種子の発芽も抑制されるが、地下茎で繁茂するので問題ない。
かっては名医草であったが、現代ではヨモギの花粉は花粉症の原因のひとつとされ、花粉症の人には要注意のキク科の植物である。
ヨモギは役に立つ植物であるが、同じヨモギ属に役に立たない意味でのイヌの名を冠せられたイヌヨモギと呼ばれる植物があって、秋に近くの小さな里山の裾で花を付ける。
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