シュウカイドウ

シュウカイドウは夜に涼風を感じる頃、日陰の湿地や山裾にひっそりその可憐な姿を現し、木立の下の暗がりにそこだけ明るくぽっと色ずく。
別名を断腸花と呼び、悲しみを誘うかのような風情のゆえの名前で、その清楚な姿と色合いで風流人に好まれ、茶花や投入花にも用いられてきた。 永井荷風はこの花を愛し、庭に植え、家に断腸亭の名を付けた。
中国原産で江戸時代に渡来したベゴニアの仲間であるが、清楚な風情の花にもかかわらず、唯一、戸外で越冬できる強さを持ち、葉の脇に付くムカゴが地に落ちて増え、野生化している。 雌雄異花で、花びらが4枚の雄花が最初に咲き、その後、花びらが5枚の雌花が咲く。

雄花             雌花

蓚酸を含み、噛むと酸っぱいが、塗ると皮膚病等の薬草になる。
名の由来は春に咲く海棠(カイドウ)の花に色合いや垂れ下がる姿が似て、秋に咲くので、秋海棠の漢名があり、それを音読みしてシュウカイドウの名となった。
カイドウ(海棠)の花は中国では大変好まれる花で、美人の代名詞にもなっている。 又、シュウカイドウの垂れ下がって咲く様子を、仏像の飾りだまを紐に通した瓔珞(ようらく)に例えて瓔珞草(ようらくそう)の別名がある。


楚々とした風情で秋を彩るシュウカイドウ科シュウカイドウ属の一科一属の花で、種々のベゴニアがこの仲間であるが、野に自生しているのは唯一シュウカイドウだけである。

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