ニラ

9月の散歩道はニラの花の散歩道となる。
初旬から道端、田の畦、土手、畑はニラの花が満開となり、一面に白い花が浮かび上がって清清しい気持ちにしてくれる。 
いたるところに咲く強い花で、一度植えると何年もよく繁茂し、怠惰な人が植える植物と言うことで別名 「懶人草」 の名が有る。 
懶は怠るの意で、一度植えると放っておいても毎年、花を咲かせる事からその名が付けられたように散歩道のあちこちで咲き、いろいろな種類の蝶が群がる。

日本、中国、パキスタン等に分布するが、原産地は中国とされ、日本に渡来したのは弥生時代とされる。
中国では強壮効果等が古くから認められ、長命のシンボルとされ、1500年代に書かれた中国の最も重要な薬学書 「本草綱目」 には薬効、効能等が詳しく記載されており、又、 ニラの種子は漢方で 「韮子」 と呼び、泌尿系疾患に用いられる等、葉から種まで含めた薬草であった。 カロチン、ビタミンB2、Cが豊富で、栄養価は高く、特有の刺激臭は硫化化合物を含む為で、整腸作用があり、血行を良くし、感冒の予防に効果がある。 江戸時代の書物にも 「陽起草と言って人の栄養を助け、身体を温める性質の良い野菜」 とある。
現在でも餃子、豚韮等の炒め物等、中華料理でよく使われ、日本人にとってもなじみの深い野菜であり、独特の匂いや味で酒も進み、子規に次の一句がある。 「韮切って 酒借りに行く 隣かな」。
このように古くから知られていた植物で、古事記には加美良(カミラ)、万葉集には久々美良(ククミラ)の名で 「・・・岡の久々美良 われ摘めど 籠に満たなふ 背(夫)なと摘まさね・・・・」 の歌がある。 九世紀には栽培もされていたようで、韮崎、韮山等の地名からも分かるように、古くから自生、あるいは栽培されていたのであろう。
ニラの名の由来は万葉時代のカミラ、ククミラのミラ(美良)がなまってニラになったとする説が多いが、ミラの由来は不明である。
又、古来から日本ではラッキョウをオオミラ、ニラをコミラと呼び、ラッキョウとは関係が深い。 10月末から11月初旬にラッキョウの産地に行くと一面の赤紫色の花畑が広がり、ニラの白い花の群生もよいが、ラッキョウの花の群生もなかなか見事である。

ラッキョウの花畑

ネギ、ニンニク、ワケギ、ラッキョウ、タマネギ等がユリ科ネギ属のニラの仲間である。

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