ヒヨドリバナとフジバカマ

ヒヨドリバナ

ヒヨドリバナは万葉集の中で山上憶良が  「萩の花 尾花、くず花 なでしこの花  おみなえし また藤袴 朝顔の花」  と詠んだ秋の七草のフジバカマ(藤袴)と同属で、花の色も白から紫がかったものまであり、花だけ見るとフジバカマとそっくりである。
フジバカマの葉は3裂し、葉の斑点等でもヒヨドリバナと区別は出来るが、現代ではフジバカマの自生種がほとんど見られなくなったのに対し、ヒヨドリバナは全国で自生しており、いたる所で見られ、散歩道の途中の観音山と呼ばれる古墳程度の丘にも群生している。  又、ヒヨドリバナの変種と考えられるヨツバヒヨドリも少し高地に行けば見られ、ヒヨドリバナの葉は対生するのに対し、こちらは下部の葉が3−5枚輪生し、アサギマダラ蝶の主な吸蜜植物である。

フジバカマ

  ヒヨドリバナ        ヒヨドリバナ        ヨツバヒヨドリ

フジバカマは古来より、蘭草(らんそう)の名で利尿、通径の漢方薬として用いられ、又、刈り取った茎葉を半乾きの状態にすると香りがし、匂い袋として使われたので平安の頃から名が有り、紀貫之が  「宿りせし 人の形見か フジバカマ 忘れがたき 香に匂いつつ」  と詠んで、一夜を共にした人の匂い袋とフジバカマを重ね合わせている。
又、フジバカマは中国から渡来したとされており(日本自生説もあるが)、現代人が外国製を尊重するように、薬草、匂い袋としてより重用され、秋の七草の一つになったと思われる。
現代でもフジバカマは園芸種として出回っており一般の目に触れる事も多く、ヒヨドリバナは 有名な花と同じ姿をしていながら野にひっそりと咲いている。
名の由来はヒヨドリが里に下りてきて鳴く頃に咲くのでヒヨドリバナと呼ばれたとする説が有力で、フジバカマは花の色が藤色で、形が袴を帯びているように見える事から来ている。
姿、形は良く似ている同じキク科の同属の花でありながら、フジバカマは平安の時代からもてはやされ、ヒヨドリバナは名も知られぬ野草であるが、自生のフジバカマが絶滅の危機に瀕し、ヒヨドリバナはしっかり生き残っているのが面白い。

次へ

最初のページへ戻る