映画「東京家族」

2013.02.04

 2月3日、近場で私とミクの行きつけの映画館で山田洋次監督作品「東京家族」を見てきました。この映画は観るぞ、と思っていたのですが、一週間ほど前に、他のことでのりこと電話しているときに、「ミクと「東京家族」を観に行ったら?」とのりこの方から声かけしてくれたのです。思いがけない申し出に本当にびっくりしましたが、すぐさま浮かんだのは、嵐のメンバーも関ジャニのメンバーも出ないような、こんな地味な映画をミクが喜ぶだろうか、ということでした。そのことお口にすると、のりこはこともなげに「ミクはそういう渋いのも見るわよ」と言うではありませんか。今度は私の方がミクが映画にどんな反応を示すのかに好奇心も湧いてきて、二人で観に行くこととなったのです。
 2時間以上(正確には135分)の作品なのですが、私はずっと引き込まれて観ていたのは当然として、ミクもずっと画面に見入っていました(時々ポプコーンを口にしつつでしたが)。ミクがクスッと笑ったのは2つの場面においてでした。
 最初の場面は確か、次男(妻夫木聡)が母親(吉行和子)に恋人(蒼井優)との出逢いについて語っているときのことでした。ほほえましい、心温まる会話とシーンだったのですが、そのときにミクは反応してクスッと笑ったのです。
 もう一回は、母親の葬式に参列した恋人(蒼井優)が、次男の父親(橋爪功)の隣に住む中学生の娘と一緒に戻る際、娘の英語の担任で、独身の先生と出会うのですが、二人が離れていった後、その先生が彼女(蒼井優)に見とれてしまって自転車ごと側溝にこけてしまう場面でした。この時もミクはクスッと笑ったのです。
 二つの場面がともに若い男女の感情にかかわるケースであったことで、私は、「ミクも女の子だなあ」ととてもほほえましく思ったのでした。特に後者のシーンでミクがクスッと笑ったことは、私にとっては感動的ですらありました。若い男性が美しい女性に気を取られるあまりヘマをするという場面は、本筋とはまったく関係のないエピソードなのですが、山田洋次監督一流の、温かい目のこもった、見るものの笑いを呼ぶことを計算に入れたカットであることは間違いありません。それにミクがしっかりと反応したということですから、これは正にミクが「分かっている」ことを示すものだと思いました。
 そのほか、この映画では、急に倒れて病院に担ぎ込まれる母親が病院で治療を受けている場面もひとしきり続くのですが、「病院慣れ」しているミクにとってはとても関心を引きつけられるシーンだったようです。

 私たちが映画を観ている間、のりこは買い物で時間をつぶしていたようですが、ミクが学校に持っていって読む読み物として、やさしく書いてある百人一首の解説本を買って、帰宅後ミクに渡していました。ミクはとても気に入ったようで、学校で先生が読み上げるような節回しで、短歌(もちろん、ふりがながついています)を次々と読み上げているのです。これにも大いに驚き、感心しました。

 そして何度も「明日は学校だ」というのです。私は最初勘違いして、「学校、行きたくないの?」と尋ねたのですが、それは見当外れもいいとこでした。ミクとしては、「東京家族」も観たし、百人一首の本も手に入ったし、先生に報告したいことがいっぱいだから、明日の学校が楽しみということでした。のりこによれば、「ミクは目立ちたがり屋だからね」だからなのだそうです。

 「ミク、すごいなあ」と、また一つ教わった気分で家に帰ったのでした。