ミクとのりこの突然の来訪

2011.04.16

 ミクの中学入学式以来すでに2週間。どうしているかな、と気になりながらも、慣れない中学生活でミクはさぞかし緊張から来る疲れで心身ともにしんどいだろうな、のりこも緊張しやすいたちなのでストレスがたまっているだろうな、と思い、様子を見に行きたい気持ちを抑えてきた私です。今日もそんなことをぼんやり考えていたときに、思いがけないのりこからの携帯への電話。「何かあったのかな?」と不安に駆られる気持ちで応えると、「ジャージャー麺の味噌を作ったから、今から届けるよ」という意外な言葉。のりこが作るジャージャー麺の味噌は、北京生まれの北京育ち、正真正銘の中国問題の専門家だった上さんの親父さん(のりこの祖父)特製の味を、上さんの姉(のりこの伯母)から直伝で教わったもので、私の大好物なのです。
 今日は日中の最高気温が26度という初夏を思わせる陽気で、ミクはなんと半袖でした。二人は、お友達の野球試合の観戦の帰りとかで、家には上がらずそのまま帰るということなので、玄関先で立ち話というあまり記憶にないスタイルでの短い出会いでしたが、それでもミクの中学生活の様子をかいま聞く(?)ことができました。中学校では、ミクの自立を促す(尊重する)意味から母親の付き添いはなし、ということだそうで、のりこは校門でミクとバイバイなんだとか。小学校の時は、もしもという場合の責任の取り方という観点から学校側がのりこの付き添いを条件としたということをうろ覚えながら記憶している私にとっては、本当にびっくりすることでした。のりこにも意外なことだったようです。
 しかも、ミクは初日こそ不安げな表情を浮かべたそうですが、小学校からの付き添いボランティアさんは中学校でも週2で続けてくれること、残りの3日については中学校側がベテラン教師だった人を付き添いに配置してくれたことが分かった後は、「じゃあ、ママ、バイバイ」という感じなんだそうです。中学生としての自覚がミクに備わっている、というのりこの話を聞いて、私はただただ圧倒されるばかりでしたし、知らず知らずの中に、いつまでもミクを子供扱いしている自分を猛省した次第です。そう、ミクは本当にひとりの人間として、小学校から中学校への転換点を大きな糧として自らのものにしているのです。そういうミクの成長に追いついていけない私が情けない気持ちにもなりました。
 のりこの話によれば、ミクは、入学式に私が参列していたことに気がついていたことを付き添いのボランティアさんには話したんだそうです。でも、私に合図するとか、手を振るような仕草をすることは、中学生になったミクにとってはもはや「幼すぎること」としてあり得ないことだったということのようです。これまた、脳天を殴られるようなことでした。なんだかミクが遠くに行ってしまったような気持ちに襲われたからです。「子離れしていない母親」という話はよく耳にしますが、こんな私は正に「孫離れしていない爺さん」です。成長を続けるミクにとって、私はこのままでは障害物になりかねません。他者感覚をもっともっと磨かないと、と自分に言い聞かせた次第です。
 わずか30分の本当に束の間の時間でしたが、強烈なショックを私に残したまま、二人は帰っていきました。でも、こんな出会いの仕方も悪くないな、と余韻をたっぷり味わいながらとても満足感に浸っている私です。