ミクへのプレゼント

2008.07.13

今回の上京は、木曜日の夕方に東久留米市立わかくさ学園でのお話、土曜日の夜には東京都の高校教師9条の会でのお話が予定に入っていたため、あまりミクと一緒に過ごす時間が持てませんでした。東久留米から八王子までは、西武池袋線で秋津まで行き、徒歩数分で武蔵野線新秋津から西国分寺に出て、中央線で八王子に出るということで、19時半には八王子駅に着くことができました。はじめの気持ちとしては、駅ビルで簡単に食事してからミクと入浴するためにのりこの家を訪れるつもりでしたが、のりこからのメールで夕食をのりこが用意してくれるというので、タクシーで直行、19時45分には着くことができました。わずかな予告時間だったのにもかかわらず、いろいろな手料理を用意してくれていました。私としては、せめて一緒に食事するときは、のりこが少しでも体が休まるように、外食に連れ出すことにしていますが、八王子駅着が19時半では、次の日のミクの学校のことを考えるととても外で食事というわけにはいかない、ということで、久しぶりにのりこの手料理を味わうことになったわけです。

今回のミクへのプレゼントに用意したのは、ディズニーもの。リロ/スティッチのテレビ版というのがどうやら続々登場するらしい(スティッチは、626号(?)作品という設定のようですが、テレビ版ではそれに先立つ試作品が準主人公となって暴れ回り、それをリロとスティッチが取り締まるという展開らしい。のりこと「ディズニーもしたたかだね」と呆れたのですが、もし本気ならば、何十本ものテレビ版DVDが出てくることになります(一つのDVDに4作品が収めてある)から、ミクはご機嫌でしょうが、正直いやはやという気持ちにもなります。しかし、早速大きな歓声と笑いを挙げて見入っているミクの楽しげな表情を観ると、何ともほほえましく、いつもミクへのプレゼント選びに頭を悩ます私にとっては、このシリーズは必要なときのピンチ・ヒッターとしてはありがたい存在かも、と思い直したりもしていました。

ミクは、今回は体調も絶好調だったらしく、金曜日の夜は焼き肉を食べに行ったのですが、その店特製の大きなおにぎり(何ともいえない好い味付けがしてあって、のりこもついつい手を伸ばして食べていました)に、のりこが刻んだタン塩の切れ端を乗せてかぶりついていました。おにぎりを半分以上、タン塩を3枚、牛のユッケをそこそこという食欲は、のりことしては納得のカロリー確保ということとか。

今回のミクがしきりに使った表現は「いいから、いいから」。DVDを観すぎになるよ、と私が注意すると、すかさず「いいから、いいから」。風呂から上がろう、と誘いをかけると、もっと遊びたいから「いいから、いいから」といった具合です。
また、先読みの深さにも驚くことがしばしばでした。DVDを観るのを打ち切ってお風呂ということになると、ミクはさっとスイッチが切り替わって入浴モードになるらしく、「遊ぼうね」と言うのです。とっさには訳が分かりませんでしたが、お風呂にミクを入れてすぐにおままごとの道具を要求するので、そこで「ああ、そうだったのか」と合点がいった次第。こんなミクの頭の回転の速さに、次男と顔を見合わせることもありました。
また、自分で物事をやることに対する意欲もますます顕著です。焼き肉屋でも、タン塩やカルビなどを網に載せる役は自分だとばかり、身に余るほどの焼き肉ばさみを両手でもって、懸命に役割を果たしていましたし、ドラッグ・ストアに寄ったときは、ミクのお菓子は買わないということなので、ミクを抱き上げていこうとすると、「ミクは歩くの」と主張して、私とお手々をつないで店に入るのです。

このようなミクは、小さいことと客観的に知的障害があることをのぞけば、私たちと意思疎通(相変わらず発声にも障害があるので、聞き取りにくいというもどかしさはありますが、本人的にはもうほとんど不自由がありません)も問題ありません。わかくさ学園でお話ししたときにも紹介したのですが、ミクは重度重複障害ということで重度の認定を受けていますが、見方によってはどの障害も軽度ではないかと判定されてしまう可能性もあります。ミクにとって決定的なことは、とにかく小さくて大きなもの、重いものは持つことができないということ(したがって労働したくてもすることができない)ですが、そのようなことは現在の障害者行政・法律においては「障害」という範疇からはじき飛ばされてしまう可能性があります。そうなると、ミクは歳を増すにしたがって障害者としては認定されない可能性も否定できません。現実にのりこは、数年後に行われる認定においては現在の重度の等級から軽度の等級に引き下げられてしまう可能性があるということを話しています。法律・制度の行政的な硬直した枠組みにはまらないミクは、要するにはじき出されてしまう可能性があるのです。そういうようなことにならないことを確保するためには、ミクのセーフティ・ネットを立ち上げなくてはならないと常々思います。

そうそう、今年の夏休みもミクとのりこが広島に来ることになりました! いろいろと苦労、悩み事がつきないのりこですので、8月6日までの諸行事が終わったら、迎えに行き、ゆっくりと骨休めさせてやりたいと思っています。