「他者感覚」「個」「人間の尊厳」

2008.05.18

今回の上京は16日からの2泊。かかりつけの医者のところが終わったのは午後2時半で、ミクの音楽療法が終わるのが5時ということで、八王子駅前のくまざわ書店で時間をつぶしました。読みたい本が4冊も見つかりましたが、重くなるので、著者、題名、出版社を手帳に控えるにとどめました。そうこうしていると、のりこから携帯にメールが入り、合流してミクの迎えへ。ミクのほしがったジブリ「ぱんだこぱんだ」のDVDが見つからなかったので、ディズニー「王様の剣」で我慢してもらったのですが、それでも夜久しぶりに一緒にお風呂に入った後、楽しそうに見入ってくれていたのでひとまずはホッとしました。

いつも利用するのりこの家の裏側の中華屋さんが臨時休業らしかったので、北野駅近くの焼き肉「牛皇」で夕食。ミクはここのタン塩がお気に入りで、これまたこの店ならではのおむすびにタン塩(のりこが小さく刻みにしたもの)を載せてほおばるのですが、そういう複合による味わい方というのはいつ見ても「すばらしい!!」と私を感激させてくれます。並みの大人だって、そんな複雑な味わい方を知らない人が結構いますものね。

翌17日は午後全障研のゼミナールに出席する用事があったのですが、その前に昼食をということで、のりこの運転で次男と彼女も加わって武富ラーメンに。何度も書きますが、ここのラーメンは、私がこれまで食べたラーメンの中でピカ一です。ミクも大好き。いかにもおいしそうにスープを最後の一滴まで飲む様は本当に一丁前。武富さんも時間がかかるミクの食べっぷりを一度として迷惑顔になったことなく、反対にミクの食べっぷりに大いに納得しているのです。のりこによれば、重度の身体障害のあるミクのお友達がミクたちと一緒に入っても、武富さんはまったく変わらない接し方をするとか。そういう人だからこそもう20年近くの付き合いになっているのですが。

全障研のゼミナールは、私が前回お話しした「他者感覚」「個」「人間の尊厳」をキー・ワードとするテーマに関する出席者のレポートを材料に3時間の話し合い。やはり群れる日本社会で「他者感覚」について心から納得するというのは結構ハードルが高いことであることを、若い皆さんの話し合いを聞きながら実感。しかし、障害のある子どもたちと接する中で他者感覚を身につけた実践例も報告されて、活発な議論が行われたことは嬉しいことでした。最後の締めくくりで私が皆さんの発言で注意して欲しいと述べたことは2点。第一、他者感覚を我がものにする入り口として愛する者について考えることは「あり」だが、そこに留まるとなると、日本の私小説レベルに留まることになってしまうので、やはり更に一歩踏み出して他者感覚を捉えるように注意して欲しい。第二、ひとりの人のレポートにもあったように、他者感覚は実は自分自身に対しても持つ必要があるということ。つまり、自分自身をも「他在」として捉える感覚を養わないと、私たちは「時代」に呑み込まれてしまう危険性がある。それが丸山眞男のいう「自己内対話」という手法の重要性にもつながるということ。ただでさえ群れがちな日本社会では、自己内対話を常に心がけることによって、他者感覚を我が者にすることが重要。

充実した3時間の後、タクシーで新宿駅まで飛ばして家族との夕食会へ急いだ私でした。次男の提案で手軽にフレンチが味わえるめじろ台の「あんとれ」へ。ここも何度か利用したことがあるお店ですが、この日注文した料理はすべて大納得。ミクの食べること食べること。学校の給食ではパンしか口にしないこともあるミクだそうですが、その健啖ぶりには本当に圧倒されました。やはり美味しいものに対してはミクは敏感に反応するのです。「先が思いやられるね」とみんなが嬉しい納得顔でした。

 本当に元気いっぱいのミクには安心なのですが、最近ストレスがたまっているのりこについては後ろ髪が引かれる思いで広島に戻る私です。