21世紀の日本と国際社会 浅井基文Webサイト

「福祉と平和は切り離すことができません」

2005.11.13

今朝、「全国手をつなぐ育成会」という知的障害を持つ人及びその家族によって構成される社団法人の全国大会が広島で開かれており、招かれてお話をしてきました。「福祉と平和は切り離すことができません」というタイトルでお話ししたのです。

お話しする前に会の関係者の方と事前の打ち合わせをし、その際に、会としては障害者自立支援法を支持する立場で、その改善を働きかけるという方針で臨んでいるとお聞きし、とても納得できない思いを味わっていました。会としては、法律の「応益負担」原則を受け入れた上で、実際の施策においてできる限り「応能負担」に近づけるというアプローチを行政に対してとっているということのようです。

しかし、応益負担という考え方は、根本的に市場原理主義を社会保障の分野に持ち込むことが本質であり、障害者の人間としての尊厳、自立を目指すことを国・社会が支えるという社会保障のあり方と真っ向から矛盾するものです。市場原理は客観的に弱者切り捨てですから、この原理を受け入れたら最後、社会保障は成り立たなくなります。

私は、この法律の下におかれるミクの将来を考えるだけでも暗澹とした気持ちになるだけに、到底会の方針を前提にしたお話をする気持ちにはなれませんでした。私は正面から、そういう考え方はおかしいこと、人間の尊厳、障害者の人間として生きる権利のことなどまともに考える人権感覚を備えていない政治・官僚、市場原理ですべてを押し切ろうとしている今の政治に正面から異議申し立てをする強い決意こそが必要ではないか、という問題提起をしました。会の指導部の人たちは渋面でしたが、私のお話中には会場からは3度も大きな拍手がわき起こり、私がお話を終えて退席する際にも改めて大きな拍手をいただき、正直に私の考えをぶつけてよかった、ととても嬉しい思いで帰ってきました。

福祉と平和は切り離すことができないという点に関しては、国・地方自治体が進めている国民保護計画に関し、すでに計画を完成させた福井県と鳥取県の計画の内容で、障害者について扱っている部分の恐ろしいまでのお粗末な内容を紹介し、戦争になったら真っ先に切り捨てられるのは障害者であることに注意を喚起しました。また、長崎県の計画素案において、核攻撃の事態を想定した内容が入っていることも紹介し、「ノー・モア・ナガサキ」を言っている県がやることは、核攻撃に備える(素案の内容は、とても「備える」などという代物ではありません)ことではなく、戦争を起こさせないための国への強力な働きかけではないか、ということも指摘しました。これは、今朝の出席者の3割が広島県の人々だということをふまえての発言でした。

また憲法「改正」の話もし、自民党案のような内容の憲法になったら、国益、国家の安全を口実に人権が無視される事態になることを指摘しました。

そして、障害者の権利を守るためにも、障害者にかかわる諸団体が手をつなぎ、今の政治に対して大きな批判力を強めていくことが望まれている、と強調しました。

ミクを含めた障害者が人間としての尊厳を全うできる人生を過ごすことができるようにという思いから、私は心を込めてお話しした約1時間でした。