21世紀の日本と国際社会 浅井基文Webサイト

ミクがいてくれるから

2005.03.14

夕方訪れた私に、のりこがしみじみした口調で、ミクがいてくれるから、今の私の充実した生活がある、と言い出しました。学生時代も漫然と過ごしたし、短い社会人生活の時も、一般職だったので、脳みそを使うこともなく過ごしていた。ミクが生まれて本当に毎日毎日を考えながら、生きている実感を味わいながら過ごせている。だから、ミクには本当に感謝している。そのような内容でした。割りきれない気持ちでいる私のことを気遣ってくれての、のりこらしい、けなげな発言だったのかもしれない、と後で思いました。私がのりこを励まさなければならない立場にいるのに、のりこにこんな気遣いまでさせる私は本当に失格です。

しかし、のりこの話を聞いているそのときには、素直にのりこの言葉を受け止める自分がいました。そんなことが口にできるのりこのことを誇りにすら思いました。確かに、私もミクから、そしてミクを通じて得ることが非常に多かったな、と思います。ミクの存在がなかったら、実感として社会的弱者の立場におかれている人たちやその周りの人たちの存在をヒシヒシと受け止めることはできなかったと感じるからです。私がそういうことについて心の底から考え、感じ、冷酷を極める日本社会に心底いきどおりを覚え、しかし、そういう逆境に真正面から立ち向かい、試練を明るく受け止めてさわやかさすら感じさせて人生を過ごしている人々に出会えたのも、ミクがこういう生を受けてきたからこそなのだ、とミクに感謝の気持ちになるのです。ミクのことについては不憫で仕方ありません。でも、ミクのおかげでのりこも、そして境地としてははるかに及ばないけれども、私も、人間であることの心をはるかに豊かにすることができましたし、私が常に口にする「人間の尊厳」という言葉に私自身の魂を込めることができているのだと思います。

八王子での残り少ない日々を少しでも長い時間、ミクと一緒に過ごしたいと思いながら、泣きたい気持ちでいる私です。本当にだめで弱虫なミクのイエイエです。