(原審:東京高判昭和39年11月10日(昭和39年(行ケ)第52号))
<判決>
上告棄却。
「上告代理人松田喬の上告理由一および二について。
特許出願に対する拒絶査定を不服とする審判の請求と右特許出願を実用新案登録出願に変更する行為とは,それぞれ別個の手続をなすものであり,特許法も,実用新案法も,右審判の請求のあつた場合における出願の変更を禁じてはいない。また,両者は,いずれもそれに条件等を付してその発効を制限できる行為ではない。されば,本件のように,上告人によつて右両者の行為が同時になされた場合においても,両者はそれぞれ直ちに効力を生ずるものと解するのを相当とし,出願変更の行為のあつたときは,特許出願は取り下げたものとみなされる旨の実用新案法8条4項の規定がこれに適用されるのは,当然といわなければならない。
論旨は,右両者の行為が同時になされたときは,そのいずれもが効力未発生の状態にあるので,その一につき取下げまたは放棄等をなさしめて他を有効ならしめるよう補正を命ぜらるべきものと主張するが,特許法17条,133条等の規定に徴するも,被上告人ないし審判長に所論のような補正を命ずべき義務あるものとは到底認められない。
してみれば,以上説示したところと趣旨を同じくする原判決に所論の違法は存せず,論旨はすべて採用できない。
よつて,民訴法401条,95条,89条に従い,裁判官全員の一致で,主文のとおり判決する。」