最判平成7年3月7日(民集49巻3号944頁(平成6年(行ツ)第83号))

(原審:東京高判平成6年1月27日(平成4年(行ケ)第170号))

<事案の概要>
 X(原告,被上告人)は,名称を「磁気治療器」とする考案についての実用新案登録を受ける権利を有限会社L研究所と共有し,該考案につき共同で実用新案登録出願をしたが,拒絶の査定を受けた。そこで,該研究所と共同して拒絶の査定に対する審判を請求したが,請求が成り立たない旨の審決がされたので,Xは,単独で審決の取消しを求める本件訴えを提起した。
 原審(東京高判平成6年1月27日(平成4年(行ケ)第170号))は,Xが単独で提起した本件訴えも適法であるとして,本案につき判断し,審決を取り消した。
 Y(特許庁長官。被告,上告人)上告。

<判決>
 破棄自判。
「二・・・原審の右判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 実用新案登録を受ける権利の共有者が,その共有に係る権利を目的とする実用新案登録出願の拒絶査定を受けて共同で審判を請求し,請求が成り立たない旨の審決を受けた場合に,右共有者の提起する審決取消訴訟は,共有者が全員で提起することを要するいわゆる固有必要的共同訴訟と解すべきである(最高裁昭和52年(行ツ)第28号同55年1月18日第二小法廷判決・裁判集民事129号43頁参照)。けだし,右訴訟における審決の違法性の有無の判断は共有者全員の有する一個の権利の成否を決めるものであって,右審決を取り消すか否かは共有者全員につき合一に確定する必要があるからである。実用新案法が,実用新案登録を受ける権利の共有者がその共有に係る権利について審判を請求するときは共有者の全員が共同で請求しなければならないとしている(同法41条の準用する特許法132条3項)のも,右と同様の趣旨に出たものというべきである。
 そうすると,本件訴えを適法とした原審の判断には法令の解釈適用を誤った違法があり,この違法は原判決の結論に影響することが明らかである。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,前記説示に照らせば,Xの本件訴えは不適法として却下すべきである。
 よって,行政事件訴訟法7条,民訴法408条96条89条に従い,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。」