(原審:東京高判昭和51年12月1日(昭和44年(行ケ)第102号))
<事案の概要>
X(原告,上告人)は,名称を「シールド工法用セグメント」とする考案につき,昭和40年2月17日特許庁に実用新案登録の出願をし,昭和42年7月14日拒絶査定を受けたので,これを不服として昭和42年9月7日審判の請求(同庁昭和42年第6446号事件)をしたが,昭和43年1月10日その登録を受ける権利の一部を極東鋼弦コンクリート振興株式会社(以下,「極東鋼弦コンクリート」という。)に譲渡し,昭和43年1月12日Y(特許庁長官。被告,被上告人)にその旨の届出をして極東鋼弦コンクリートと共同の出願人となつた。そして,特許庁は右出願につき,昭和43年9月24日出願公告をした(なお,これに対し,三和鋼器株式会社ほか2名から特許異議の申立があつた。)が,昭和44年8月13日X及び極東鋼弦コンクリートを名宛人として,拒絶査定に対する審判の請求は成り立たない旨の審決をし,その謄本は昭和44年12月16日Xに送達された。
X出訴。
原審(東京高判昭和51年12月1日(昭和44年(行ケ)第102号))は,「実用新案の登録を受ける共有の権利に関する審決の取消訴訟は,その審決と同様の意味において,その権利の共有者全員について合一にのみ確定すべき要請を受けるから,固有必要的共同訴訟というべきであつて,審決の当事者であつた,又は当事者たるべき,その共有者全員が共同してこれを提起することを要するものと解さなければならない。」として,訴えを却下した。
X上告。
<判決>
上告棄却。
「上告代理人長畑裕三,同吉原省三の上告理由について
実用新案登録を受ける権利の共有者がその共有に係る権利を目的とする実用新案登録出願について共同して拒絶査定不服の審判を請求しこれにつき請求が成り立たない旨の審決を受けたときに訴を提起して右審決の取消を求めることは,右共有に係る権利はついての民法252条但書にいう保存行為にあたるものであると解することができないところ,右のような審決取消の訴において審決を取り消すか否かは右権利を共有する者全員につき合一にのみ確定すべきものであつて,その訴は,共有者が全員で提起することを要する必要的共同訴訟であるから,これと同趣旨の見解のもとに,実用新案登録を受ける権利の共有者の一員にすぎないXが単独で提起した本件審決取消の訴を却下すべきものとした原判決は,正当であつて,原判決に所論の違法はない。論旨は,採用することができない。
よつて,行政事件訴訟法7条,民訴法401条,95条,89条に従い,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。」