ふくろう博士のカナダ便り

ふくろう博士のカナダ便り−3
”ヴィクトリア旅行  巻”



われわれ、ケローナの田舎者も、たまには文化の香りに浴さねば、と思っていた矢先、
ヴィクトリアに行かない?」 と誘いを受けた。


<td><pre><div>ブリティッシュ・コロンビア州の州都で

ヴァンクーヴァーから
船で西へ一時間くらいのところにあり、
イギリスのヴィクトリア時代の
雰囲気をだだよわせている

美しい町だ。

渡りに船と、もちろんOK!
 というわけで、

われわれ八名を載せた大型バンは
春まだ浅いカナダの雄大な大自然の
中を
一路西に突っ走ること五時間。

フェリーに乗ってヴィクトリアに着
いたのが、
午後二時頃。


さっそくエンプレスホテルに入り、
大きく深呼吸をして
文化的な空気を胸一杯に吸い込ん
だ。
ここでできることはそのくらい。

有名なハイティー (イギリスの貴族にでもなった錯覚で楽しめるうまいお菓子のたくさんついた午後の紅茶)は 45ドルもするから、とてもわれわれ貧乏人には手が出ない。
 街に出てあちこち洗練されたウィンドウに感激しながら歩く。 中でもとくに綺麗な洋服屋〔?〕に入ると、日本人の中年の女性の店員さんがいた。 「なかなかいいものがありますね」というと 「ここもバンクーバーも、東京やニューヨークと比べるとまだまだ田舎ですよ。」 東京を逃げ出してきた田舎者にとっては強烈なカウンターパンチ
 しかし、よろめいたり、ふらついてばかりはいられない。
まだ、明るいうちにこれから五日間を過ごす近くの町、スークのロッジに急いだ。

外から見ると小さな家だったが、中に入ると、ダブルベッドの広い寝室が一つ。

これは若いカップルと彼らのベービーたち(Two Cats!)に温かくお譲りする。

もうひとつの寝室は兵舎みたいな二段ベッドの小部屋で、上の段に家内が、
下の段には独身の女性と彼女のベービー(Cat too!)が泊まり、
小生はサロンのソファーベッドに寝ることになった。
これで総勢八名の生活が始まった。
 人間様は親しく和気藹々としているが、
ベービーたちもちゃんと互いに挨拶させねば。
というわけで、それぞれの籠から出されて、対面ということになる。
すっかりなじんで「ニャオゴロリン」とするかと思いきや、何やら険悪な雰囲気!

一方は 男 と 女のご夫婦、他方は
まだうら若い美女ニャンコ

なるほど奥方が険悪になるのは無理もない。 こんな時に弱いのは決ってだ。 こそこそとその場を立ち去った。 が、奥方はしばし「うちの人に近づいたら、ただじゃおかないからね!」と美女に対して凄む。
 
奥方が、ようやく相手がひるんだことを見届けたところで
話しは終わりかと思っていたら、
今度は彼女、ご主人に俄然くってかかり、
怒りまくって追いかけ始めた

彼がその場を立ち去るときに、
女の子にちらりとウィンクしたのを見逃していなかったらしい。

「あの子たちは両方とも It なのに。
まだ He とSheで、あんなにヤクのかしらね」と買主の奥様が笑った。

慈悲心(?)から手術をしたというわけだが、体は It でも気持は He と Sheだったんだ。
老年のわれわれに対する何とも偉大な教訓ではある。
 
 さて、翌朝になった。ところがまた変な事態が発生した。 今度は下のベッドに寝ていた独身の女性の機嫌が悪いのである。 家内のいびきで眠られなかったという。よくきいてみると、 彼女のベービーが家内が大きくいびきを轟かせる度に、ピクリと動いて眠れていなかったのだという。 なるほど、それならご不満なのはよく理解できる。 その上、小生のいびきまで部屋の仕切りを通して聞こえてうるさかったという。 われわれ二人は互いのいびきが邪魔になったことはなかったが、 それほど互いに訓練されていたとは知らなかった。 平身低頭して、あくる日は家内も私のソファーベッドに寝ることにした。  そし二日目の夜が来た。 女性たちが夕食の準備をしている間、小生はシャワーを浴びていた。 ところが、だんだん湯の出が悪くなりとうとう出なくなってしまった水も出なくなる。 台所では女性たちが水が出ないと騒ぎはじめる。 問題は台所やシャワーではない。トイレだ!  直ぐにロッジのマネジャーに電話すると、 電話でああせよこうせよと指示は出るが一向に水は出な。 やんやん言うと、とうとうマネジャーも折れて、 「それなら別の家をお貸しするから引越しの用意をしてください」という。 「でも、値段(一人3000円ほど)は同じだという条件でないとだめだ」 「それは当然、こちらの家の問題だから」というわけで、 誰もトイレが我慢できなくなる前に大急ぎで用意をととのえ、 十分ほど先のマネジャーの家まで車で走った。
 
 マネジャーも謝って、
「それでは、私の家の隣のロッジにお入りください」
という。

ところがである。これが何と大邸宅なのだ! 
びっくりして、中に入ると、
大きなサロンが二つ。
綺麗なサンルームが一つ。
広いガラス窓に囲まれた二十畳ぐらいの大きなリビング一つ。
その他、大きな食堂、台所。玄関も広い。
そして二階には室内大湯船(ジャグジー)のついた
スイートのローヤルベッドルーム
(これはもちろん理解あるわれわれ夫妻は
直ちに若いカップルとそのベービーたちにお譲りする)。</div>
大きなダブルベッドのある大きな寝室(これは独身の女性とそのベービーに)。

そして二つシングルベッドのある寝室。われわれはそこにはいる。

ベッドもわれわれ小柄な夫婦にぴったり合った気持の良いもの。
要するに子供部屋なのだ。
おまけに赤ん坊のベッドまでついていた。

喜んだのは人間だけではなかった。ベービーたちもだ。
広いし、駆け回れるし、探検する場所も一杯だし。
 
 もうこうなったら、さっきのしょげようはどこへやら、子供のようにはしゃぎまわる。 「幸いなるかな断水、かくも豪華な家をもたらしたがゆえに」 ということになった。 こうなると勝手なもの 「日ごろの誰かさんの心がけがいいからよ」 と言い出すしまつ。 そして夜はいびきに心配なくぐっすりと寝れた。
 そして朝が来た。
 明るくなった。


ところが外をみて、
またまた仰天!! 

何とこの家は
プライベート・ビーのついた、
180度 海に展望のき
素晴らしい家だったのだ。


そこへマネジャーから電話が入った
「水道がなおりました。戻られますか?」
「いえいえ、もうここで十分満足でございます!」

 かくして破格の値段大富豪の四日間を過ごすこととはなったのである。 ただ、豪華な生活が出きるだけでは、つまらない。 それをメチャクチャ安い値段で手に入れたというところに 何とも痛快な楽しさがあったのである。
 




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