藤田宏, 池部晃生, 犬井鉄郎, 高見穎郎:数理物理に現われる偏微分方程式Ⅰ

作成日:2021-10-12
最終更新日:

概要

本分冊では 熱方程式とラプラス方程式、波動方程式について述べる。 他の方程式は続きの数理物理に現われる偏微分方程式Ⅱで取り上げられる。

本書は「岩波講座 基礎数学」全 24 巻( 79 分冊) のうちの第 16 回配本のうちの 1 冊である。

感想

私には難しすぎてわからない。せめて、これから引用する次の問題を解きたいと思う。pp.25-26 にある。

4 周期性の境界条件のもとでの熱方程式の初期値・境界値問題

`{(u_t = u_(x x) quad (t gt 0, 0 lt x lt 2pi) ), (u(t, 0) = u(t, 2pi) quad u_x(t, 0) = u_x(t, 2pi)),(u(0,x) = sin^3x) :}`
を,Fourier の方法を用いて解け.
注 これは物理的には,長さ `2pi` の針金を輪形に閉じたときの熱伝導の問題である.

フーリエの方法によれば、次の級数和の解が考えられる:

`u(t,x) = 1/2 a_0 + sum_(n=1)^oo e^(-n^2t) (a_n cos nx + b_n sin nx)`.

ところが、三角関数の公式 `sin 3theta = sin2theta cos theta + cos2theta sin theta = 2sintheta(1-sin^2 theta)+sintheta(1-2sin^2 theta) = 3sintheta - 4 sin^3 theta`から、 初期値は次のとおりかける。

`sin^3x = 3/4 sin x - 1/4 sin 3x`

これと `u(t,x)` の式を見比べて、すべての自然数 `i` で `a_i = 0` かつ `b_1 = 3/4, b_3 = -1/4`, 1 と 3を除くすべての自然数 `i` で `b_i= 0` であることがわかる。 つまり、与えられた初期値・境界値をもつ解は、次の通り表わされる:

`u(t,x) = 3/4 e^(-t) sin x - 1/4 e^(-9t) sin 3x`.

初期値の温度分布が `sin^n x` の形であれば、フーリエ級数の項は有限で抑えられるのがうれしい。 なお、`u(t,x)` を天下りで書いたが、これは本書をはじめ、 とくに本講座の「解析入門Ⅴ」の p.8 の記述を参考にしている。

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

書誌情報

書 名数理物理に現われる偏微分方程式Ⅰ
著 者藤田宏, 池部晃生, 犬井鉄郎, 高見穎郎
発行日1977 年 1 月 22 日(第1刷)
発行元岩波書店
定 価
サイズA5版 1 ページ から 160 ページ
ISBN
その他岩波講座 基礎数学 草加市立図書館にて借りて読む

まりんきょ学問所数学の部屋数学の本 > 藤田宏, 池部晃生, 犬井鉄郎, 高見穎郎:数理物理に現われる偏微分方程式Ⅰ


MARUYAMA Satosi