藤田 宏:解析入門Ⅴ

作成日:2021-10-14
最終更新日:

概要

p.1 の「はじめに」から引用する:

“解析入門” の最後の分冊をなす本講では,Fourier 級数・変換,常微分方程式, 超関数(distribution) の初等的な解説を行なう.

本書は「岩波講座 基礎数学」全 24 巻( 79 分冊) のうちの第 24 回配本のうちの 1 冊である。

感想

本冊の内容は、同じ「岩波講座 基礎数学」 の数理物理に現われる偏微分方程式Ⅰとも関係が深い。 実際、この偏微分方程式Ⅰにあった問題を解くのに、本書の pp.7-9 を使った。 この内容について、本書を見てほしい。

p.85 にはこんな記述がある。

おそらく読者は常微分方程式と初対面ではあるまい.高校の微積分のカリキュラムにも

`(dy)/(dx) = ky + l`  (`k, l` 定数)
程度の微分方程式が含まれているからである.

どうも、現在(2021 年現在)の高校数学のカリキュラムには、微分方程式そのものが含まれていない。 文部科学省が、2018 年 (平成 30 年)7 月発行した 「学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 数学編 理数編」によれば、 2022 年度から実施する指導要領では、理数科の理数数学Ⅱにのみ微分方程式ということばが現れる。

私が高校生だった頃はどうだったか。私は普通科だったが、高校3年で学ぶ数学には微分方程式があり、 `(dy)/(dx) = ky + l` より高い程度の微分方程式まで解く練習をした覚えがある。

一つは問題を解こう。p.133 の問題1である。

 1 `y = ux` とおくことにより

`(dy)/(dx) = y/x + (y/x)^2`
を解け.また一般にこの変換により
`(dy)/(dx) = f(y/x)`
の形の微分方程式は変数分離形に帰着されることを示せ.

`y = ux` の両辺を `x` で微分して、`(dy)/(dx) = x(du)/(dx) + u` 。これを微分方程式に代入すると、

`x(du)/(dx) + u = u + u^2`
`int 1/u^2 du = int 1/x dx `
`-1/u = log x + C`
`-x/y = log x + C`
`y = -x/(log x + C)`
本当にこれでいいのだろうか、心配になってきた。
`y / x = - 1 / (log x + C)`
`(y / x)^2 = 1 / (log x + C)^2`
これは与えられた微分方程式
`(dy)/(dx) = y/x + (y/x)^2`
を満たす。
一般に `y = ux` によって変数を x から u に変換することで、次の微分方程式
`(dy)/(dx) = f(y/x)`
は次のように表される:
`(du)/(dx) = f(u) - u`
これを本書 p.103 の(3.42)式の変数分離型方程式
`(dy)/(dx) = p(x)q(y)`
と比べて、`p(x) = 1, q(y) = f(u) - u` とした形になっているので、変数分離形に帰着される。

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

書誌情報

書 名解析入門Ⅴ
著 者藤田 宏
発行日1979 年 9 月 25 日
発行元岩波書店
定 価
サイズA5版 387 ページ から 482 ページ
ISBN
その他岩波講座 基礎数学 草加市立図書館にて借りて読む

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MARUYAMA Satosi