秋山武太郎 : わかる幾何学

作成日 : 2022-03-17
最終更新日 :

概要

「緒言」から引用する :

この書を読まれる人は,著者と共にその苦心努力を分ける意気を以て途中厭きて捨てることなく, どうか最後のページまで熱誠に研究し読破してもらいたいものである.

補助線

私は図形の問題を見ても補助線が浮かばない。だから、たとえば次の問題を見たときは、 補助線が浮かばなかった。その代わりに「どこかで見た問題だ」という意識が上った。 本書の問題集からp.338 にある 3・23である。

平行四辺形 ABCD 内に P 点を,∠ DAP と ∠ DCP とが等しいようにとれば, ∠ ADP と ∠ ABP ともまた相等しい.(難)
〔ヒント〕同上.

どこで見たのかといえば、「なっとくの高校数学 図形編」 の p.162 であった。やはりこの問題では補助線を引かなければならないのか。

図の描き方

巻末には「わかる幾何学問題集」と題して、多くの問題が集められている。ほとんどの問題には小さな図がついているのだが、 中には図がない問題もある。せっかくなので図を自分で書いてみたいが、紙と鉛筆でもうまくかけない。 またコンピュータでもうまく描けるか心もとない。p.341 の問題 3・39 を引用する。

3・39 円に内接する三角形 DEF があって, ∠D, ∠E,∠F がそれぞれ 100°,30°,50° であるとき,3 つの角を 2 等分する弦 DA,EB,FC を引くと,三角形 ABC の角の大きさはどうか(図は省略する)
〔ヒント〕40°,75°,65°

DEFO 100° 30° 50°

まずは〔ヒント〕(実質は解答)に頼らずに、図が描けるかどうかやってみる。 まず、三角形 DEF だが、座標を用いて、`D(0,d)、E(-e,0)、F(f,0) (d, e, f gt 0) `としてみる。 また座標原点を O とする。 すると、`d = e tan 30° = f tan 50°` であることがわかる。ピクセル単位で d = 100 としよう。 計算すると次の値が得られる。
`e = d // tan 30° = 173.21 , f = d // tan 50° = 83.91`
これをまず図にしよう。右の通りだ。なお、`e + f = 257.12 、 (e+f)//2 = 128.56` である。

では次に三角形 DEF に外接する円を求めないといけない。考えてみると、 この円を基準に考えるのがその後の処理のことを考えるとよさそうだ。 言い換えれば、三角形 DEF のことだけ考えて前のように座標をとったのは筋が悪い。 そこで前の座標はご破算にする。まず、最初の円(三角形に外接する円)を、 座標原点を中心とし、半径が `R` である円とする。EF は `x` 軸に平行となるようにとる。 すると、∠EOF = 160° であり、直線 OF と x 軸のなす角は 10° である。 同様に OD と x 軸のなす角は 70° 、OE と x 軸のなす角は 170° である。 以上をまとめて図にあらわしてみる。R は 100 ピクセルとする。ここで、 sin 10° = 0.17364, cos 10° = 0.98481, sin 70° = 0.93969, cos 70° = 0.34202 を使う。

ABC DEFO

あとは三角形 ABC を描く。まず B の座標は E の二等分線が円と交わる点である。 直線 EF と直線 EB の交わる角は 15° で、∠ OED は 10° だから、∠ OEC = ∠ OCE = 25°だ。 ∠ EOC が 130° だから 直線 OC と `x` 軸の交わる角は 40° となる。よって、 B の座標は `(R cos 40°, R sin 40°)` となる。同様に考えて C の座標は `(R cos 120°, R sin 120°)` となる。A の座標は `(0, -R)` である。 これは、三角形 OEF と三角形 ODA が相似であることからわかる。よって座標が定まる。 sin 40° = 0.64279, cos 40° = 0.76604, sin 120° = 0.86603, cos 120° = -0.50000 を使う。 ということでなんとか図ができた。角 D, E, F の二等分線は青色の線で引いた。 青線が1点で交わっているのは、交わっている点が 三角形 DEF の内心だからだ。

さて肝心の問題の解答だが、いろいろ図を書いているうちにわかった。まず三角形 ABC の角 A については、 これは ∠CAD + ∠DAB に等しい。本書でいう「円周角不変の定理」(p.145) から ∠CAD = ∠CFB = 25°、 ∠DAB = ∠DEB = 15° なので、 角 A = 40° である。角 B や角 C についても同様に求められる。

本問題は、コンピュータ上に図を描くのが難しかった。すなわち座標を導入するほうが難しかった。 だいたい、座標を導入しても問題を解くには全く役に立っていない。まあ、そういうこともあるだろう。

性質

p.56 では性質という用語の意味を説明している。以下引用する。

性質という言葉は定理という意味に用いる.(中略) 犬が後足を 1 本上げて電柱に小便をかけるのは,犬の考えから「人間というものは馬鹿なものだ. 家も作らずに野天に柱ばかり立てている.1 つこれに小便でもぶっかけてやれ」 などという考えからではなく,これは以て生まれた犬の性質である. 犬の性質はどうでもよいが,(後略)

野天ということばが珍しい。と思ったら、「野天風呂」などの用語があることがわかった。

誤植

p.350 のキャプション 4・53 図は、正しくは 4・35 図である。

わかる数学全書

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

書誌情報

書名わかる幾何学
著者秋山武太郎
改訂者春日屋伸昌
発行日1996 年 4 月 30 日 14 版発行
発行元日新出版
定価3301 円(本体)
サイズA5 版 388 ページ
ISBN4-8173-0006-X
その他草加市立図書館にて借りて読む

まりんきょ学問所数学の部屋数学の本 > 秋山武太郎 : わかる幾何学


MARUYAMA Satosi