秋山武太郎 : わかる立体幾何学

作成日 : 2022-03-17
最終更新日 :

概要

「改訂者のことば」から引用する :

現在,立体幾何学を取り扱っている書物はきわめて少ない.ことに, 立体幾何学だけで一書を成しているものはおそらくこれだけであろう. それだけに,これはきわめて貴重な書物である.

正十二面体

私は図形の問題を見ても補助線が浮かばない。立体幾何学になればなおさらである. さて、私は同時期に「美しい幾何学」という本を借りていて、その中の正多面体の二面角に興味を持った。 本書でも正多面体は第3章の第3節で扱われている。以下 p.147 から引用する。 ただし、第 3・30 図は改変している。

1 点 A のまわりに,3 つの正五角形 P, Q, R を,第 3・30 図に示すようにつなぎあわせてできる三面角 A-BCD は,3 つの面角がみな正五角形の 1 角で等しいから, 3 つの二面角も 89 ページの定理 5 によって等しくなる.(後略)

ABCDEF PQR 第 3・30 図

この第 3・30 図の改変というのは次のとおりである。本書の図は斜投影のように見えるが、 この改変した図は正投影とした。このとき、線分 AB, CF, DE はすべて平行である。 なぜ正投影にしたかというと、正投影にすれば図を正確に書けるし、 その結果立体の各種の値も算出しやすいからだ。この図で、線分 AB の値を 2 とすると、 線分 CD, CE, DE, FE の長さはすべて `sqrt(5) + 1` である。また、 投影した面上で直線 AB と 五角形 R で辺 AB に向かい合う(図には点の名前はふっていない)点との距離は、 `(sqrt(5) + 1)^2` である。これらの証明は省略する。

その次に、二面角の大きさを求める例題がある。

例題 11. 正十二面体の 1 つの稜における二面角の大きさを平面作図によって求めよ.

〔解〕上の 3・30 図において,二面角 E-BA-F を求めることにする. 上の図には書いてないが,E, F から AB の延長へおろす垂線の足は同一点となる。 これを N と名づけると,2 等辺三角形 NEF の頂角 N が求める角となる.

この場合の EF の長さは R の正五角形の対角線 FA に等しい.ゆえに,第 3・31 図に示すように, 1 辺 BA を共有する 2 つの正五角形の B に隣る頂点 E, F を結びつけて AB の延長との交点を N とすれば,N は EF の頂点である.そこで図のように, 三角形 KNF を,NK = NE, FK=FA になるように描けば, 角 FNK が求めるものであることは明らかである.

BAFNEK QR 第 3・31 図

ここで第 3・31 図を掲げる。ここでも改変しているがそれについてはのちに述べる。 第 3・30 図 と第 3・31 図の違いは、前者は立体の投影図であるのに対し、 後者は立体の展開図である、ということである。本書の説明で、 角 FNK が求めるものであることは明らかであるというところがどうしてもわからなかった。 本に書いてあることで「明らかである」ということは往々にして明らかでないことが多い。 それで足りない頭で考えてみた。結局、なぜ第 3・31 図の角 FNK が求めるものであるかというと、 こういうことだった。まず、立体となった FNE を想像してみる。 FN の距離と NE の距離は同じだということはわかる。では FN や NE の距離は図でどのように測るか。 それには山形になっている立体を押し広げればいい。この押しつぶし操作は、AB を軸にして、 AB を蝶番のようにさせればできる。このとき、立体であっても、押しつぶしても、NE の距離は変わらない。 なぜなら、AB を軸にしているからだ、かくして、立体のときにわからなかった NE の長さは、 押しつぶして、展開図の形にしたら目にみえるようになっていた。これで、図から NE と FN の距離がわかった。 あとは図でこの距離を調べればいい。NE は共通ということにしてNE のほうを回転させよう。 そして 立体となっている FE 間の距離は正五角形の対角線だから、これは EA と同じである。 したがって、E を中心とし EA の長さで円弧を描き、 N を中心として NE の長さで描いた円弧を描く。これら 2 つの円弧の交点を K とすると、 FNK が求める角である。なお、本書の第 3・31 図からの改変点は、R と Q に色を付けたことと、 線分 NE と 線分 NK が等しいことを示す印を省き代わりに緑の線分であらわしたこと、 同様に線分 AF と線分 EK が等しいことを示す印を省き代わりに青の線分であらわしたこと、 それからコンパスの軌跡を省いたことである。

では問題 30 (p.148) とその解答 (p.275) を記す。

問題 30. 正十二面体の 1 つの稜における二面角の半角の余弦(cosine)を求めよ.

〔解〕147 ページの第 3・31 図について説明する。 2 等辺三角形 NFK の頂角 N の半分の角の余弦を求めればよいのである.この頂角を 2 `theta` とすれば,

`bar"FK"^2 = bar"NE"^2+bar"NK"^2 - 2"NG"*"NK"cos 2theta` (公式は,`a^2 = b^2+c^2 - 2bc cos /_ "A"` )
ところが FK は1 辺の長さが `a` である正五角形の対角線 FA に等しく,これは 「円に内対する四角形の対角線の積の和に等しい」というトレミーの定理によると, 2 次方程式 `x^2-ax-a^2` の根となる.これを解いて,`x = (1+sqrt(5))/a ` をえる. ゆえに `bar"FK"^2 = bar"FA"^2 = ((1+sqrt(5))/2a)^2 = (6+2sqrt(5))/4a^2`. また,図の 2 等辺三角形 BAF と垂線 FN とから,`bar"AF"^2 = bar"AB"^2+bar"BF"^2+2"AB"*"BN"`. これに値を代入すると,`(6+2sqrt(5))/4a^2 = a^2+a^2+2a*"BN"`. これから,`"BN" = (-1+sqrt(5))/4a` をえる.したがって, `bar"NK"^2=bar"NF"^2=bar"BF"^2-bar"BN"^2 = a^2-((-1+sqrt(5))/4a) = (5+sqrt(5))/8a^2`. ゆえに最初の等式を簡単に,`bar"FK"^2=2bar"FN"^2(1-cos2theta)` と書き換えて, これに値を代入すると,`(6+2sqrt(5))/4a^2 = 2 times (5+sqrt(5))/8 a^2(1-cos2theta)`. これから `cos2theta = -sqrt(5)/5` をえる.さらに公式 `1+cos2theta = 2cos^2theta` から, `cos theta = sqrt((5-sqrt(5))/10) ~= 0.52564`

ところどころわからないところがあるのであとで説明を補いたい。

誤植

p.147 の下から 2 行目2 つの正五角形の B に隣る頂点 E, F を結び付けてとあるが、 《2 つの正五角形の B に隣る頂点 E, F を結び付けて》だろう。それから今は隣るという言い方はしないで、 《隣接する》というような気がする。

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

書誌情報

書名わかる立体幾何学
著者秋山武太郎
改訂者春日屋伸昌
発行日1994 年 10 月 20 日 5 版発行
発行元日新出版
定価3107 円(本体)
サイズA5 版 291 ページ
ISBN4-8173-0052-3
その他草加市立図書館にて借りて読む

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MARUYAMA Satosi