小平 邦彦:複素解析Ⅲ

作成日:2021-09-30
最終更新日:

概要

第Ⅱ分冊に引き続き、 Riemann 面、Riemann 面の構造、閉 Riemann 面上の解析関数について述べるとともに、 第Ⅰ分冊第Ⅱ分冊と本分冊の計3冊を合わせた問題を付す。

感想

巻末の問題から引用する。p.421 である。

1 等式 `z_1^2 + z_2^2 + z_3^3 = z_2z_3 + z_3z_1 + z_1z_2` は複素平面上の 3 点 `z_1, z_2, z_3` が正三角形の頂点となるための必要にして十分な条件を与えることを証明せよ (Ahlfors: Complex Analysis, p.15).

このアールフォルスの参考文献には脚注があり、 Lars V. Ahlfors: Complex Analysis, 2nd edition, McGraw-Hill © 1966. とある。

この問題は、現在の高校数学で解ける。等式に関しては、`z_1, z_2, z_3` の代わりに `alpha, beta, gamma` を使い、等式も覚えやすい `(alpha - beta)^2 + (beta - gamma)^2 + (gamma - alpha)^2 = 0` の形でインターネットで見ることができる。まず、正三角形→等式 を示す。 `z_1, z_2, z_3` が正三角形をなすのであれば、点 `z_2-z_1` と点 `z_3 - z_1` はいずれも大きさがひとしく、 かつ一方は他方を角度 `pi/3` 左回りあるいは右回りに回転した点である。したがって、`omega = 1+-sqrt(3)i` とすると、 `z_2 - z_1 = omega (z_3 - z_1)` である。この等式を3乗して、 `(z_2 - z_1)^3 = - (z_3 - z_1)^3` を得る。すなわち、

`(z_2 - z_1)^3 + (z_3 - z_1)^3 = 0`
左辺を因数分解して
`{(z_2 - z_1) + (z_3-z_1)}{(z_2 - z_1)^2 - (z_2 - z_1)(z_3 - z_1) + (z_3-z_1)^2} = 0`
整理して
`(z_2 + z_3 - 2z_1)(z_1^2+z_2^2+z_3^2-z_2z_3 - z_3z_1 - z_1z_2)` = 0
ここで左辺の第1項が 0 に等しいと `2z_1 = z_2+z_3` であるが、これは`z_1` が `z_2` と `z_3` の中点であることを意味する。 ところが、`z_1z_2z_3` が正三角形をなすことから、これはありえない。したがって、第2項が0 である。 よって等式が成り立つことが言えた。
等式→正三角形を示す。これは今の議論を逆にたどる。 まず、等式を `f(z_1, z_2, z_3) =0` と移項して両辺に `z_2 + z_3 - 2z_1` を乗じて展開・因数分解する。 すると、`(z_2 - z_1)^3 = - (z_3 - z_1)^3` が得られるのでこの両辺の立方根をとると、 `z_2 - z_1 = omega (z_3 - z_1)` が得られる。よって `z_1, z_2, z_3` は正三角形である。

この問題は、インターネットで解法が出ていなかったら、私は解けなかったと思う。`a^3 + b^3` が因数分解できる、 というのを私はすっかり忘れてしまって、`(z_2 - z_1)^3 + (z_3 - z_1)^3` をすぐに展開した挙句にあきらめたと思う。

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

書誌情報

書 名複素解析Ⅲ
著 者小平 邦彦
発行日1973 年 2 月 1 日
発行元岩波書店
定 価
サイズA5版 124 ページ
ISBN
その他岩波講座 基礎数学 草加市立図書館にて借りて読む

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MARUYAMA Satosi