集合概念がもたらす深遠な謎、集合論の中に潜むロマンチックな想像の精神、 これらを数学の訓練を経ていない人々に説明した著作。 新装版ではカントールの評伝が追加されている。
旧版を買ったのがいつだったろうか。培風館の数学ブックガイド 100 に推薦されていたからだろう。 その書評では、「はじめて学ぶ人のために」という副題はまやかしもいいところで、 第1章はまだしも、第2章から竹内節が炸裂する、というようなことが書いてあったように思う。
はじめて学ぶ人である私にまず壁として現れるのは、60 ページである。 集合の集合の概念が現れてきて、次の注意が出てくる箇所である。
`a` は `{a}` の元ですが,
`{a}` は `{a}` の元ではありません
ここからさらにベキ集合の概念が導入され、そして無限集合や集合の濃度の概念まで至るのであるが、 これを追っていくのは大変なことだ。
p.72 には次の文章がある。
これはちょうど, 3 までしか数えられない野蛮人が 3 以上の数は,“たくさん”としか数えられなくて
とあるが、正しくは 3 を超える数は,であるべきだ。以上には、その数を含むのがふつうの使い方だ。
なお、amazon の書評のページでは p.75 の対角線論法の表が誤っている、 と書かれている。私が持っているのは新装版 2009 年 8 月 21 日第 8 刷発行なので、 修正されている。
それから、同書の積集合の定義にも注意が必要だ。同書の積集合は一般には冪集合(ベキ集合)であり、 集合 `A` の部分集合全体からなる集合である。 一般に積集合といえば、 与えられた集合の集まり全てに共通に含まれている要素をすべて集めて得られる集合であり、 集合`A` と 集合 `B` の積集合 `A nn B` で表す。 同書でも `A nn B` の記号は一般と同じ意味で第1章では説明されているが、そこには積集合の記述はない。
このページの数式は ASCIIMathML で記述し、MathJax で表示している。
書 名 | 新装版 集合とは何か |
著 者 | 竹内 外史 |
発行日 | 2009 年 8 月 21 日(第 8 刷) |
発行元 | 講談社 |
定 価 | 900 円(本体) |
サイズ | 新書 版 ページ |
その他 | 講談社ブルーバックス |
ISBN | 4-06-257332-6 |
NDC | 410.9 |
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