久保 司郎:逆に考え、逆に解く

作成日:2021-12-08
最終更新日:

概要

「はじめに」から引用する:

(前略)本書では、逆に考えることの重要性とおもしろさを強調し、逆に解くことの基本、 ならびに具体例とあわせて構成することとした。(後略)

感想

逆問題について、わかりやすく説明されている。

1章 逆問題とは何か

クイズや謎解きに興味を覚える方も多いだろう。 という書き出しから、逆問題の定義や、逆問題の分類が手際よく解説されている。

2章 いろいろな逆解析

逆問題と逆解析が数多くの例を通して述べられている。 p.30 ではドラムの音色からドラムの形がわかるだろうか、という問と、その否定的な解について述べられている。 この魅力的な問題は、数学的には「等スペクトル問題」とか、問題提起者の名前をとって「カッツ(Kac)の問題」 などと呼ばれている。そして、ドラムに関連して、音-声を出す人の声道のモデルに話題が及ぶ。 この声道モデルに関して具体的な結果は述べられていないが、遥か昔に、 個人の声は、気道を太さと長さの異なるパイプを6本だか12本だかつなげたモデルで十分説明できるということをどこかで読んだ覚えがある。 まあ、昔のことだからたぶんウソっぽい。
ほかにも、X 線で材料の欠陥の形や場所を推定する話が出てきて、私が駆け出し技術者時代のことを思い出した。 駆け出し技術者時代といえば、pp.42-43 にある、熱膨張と収縮による残留応力の推定の話も、 それに近いことをやろうとしてこともあり、ひっかかっている。本書では、残留応力の推定を、 測定手段に何を使うかがはっきりと書かれていないので、考えてしまう。 おそらく、冷やされる材料(金属やガラス)の材料表面温度の時間変化と、 冷媒(水など)の材料近くの温度時間変化のことだろうとは思う。私がやろうとしていたのは、 X 線を使う方法である。X 線で残留応力を測定する方法は既にあったが、いくつか制約があったので、 その制約を緩和しようとしていたのだった。

なお、参考文献には著者による「機械材料力学における逆問題とその構造改善」が応用数理誌に掲載予定となっている。 実際には 1997 年 7 巻 3 号 p. 181-195 に掲載されている。

関連書籍

書誌情報

書 名逆に考え、逆に解く
著 者久保 司郎
発行日平成 9 年(1997 年) 8 月 30 日(第1版第1刷)
発行元オーム社
定 価1400円(本体)
サイズB6版
ISBN4-13-062906-9
その他草加市立図書館で借りて読む

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