サブタイトルは「偏微分方程式の逆解析」。
第1章は逆問題・逆解析を多自由度系の例で説明する。私にもわかったような気がするが、 実際にはわかっていないのだろう。なお、p.18 で弾性方程式(ナビエ(Navier)の方程式)とあるが、 これは流体力学でいう、いわゆるナビエ・ストークスの方程式のことではないのだろう。 ここでは、弾性体に関する方程式のことであり、具体的には、2次元の弾性体に対しては 第3章の p.122-123 に出てくる (3.9)、(3.10)、(3.11) の3式をまとめたものと解すればいいだろう。
第2章は偏微分方程式の逆問題の数学解析について述べられている。pp.24-25 では、 数学解析の立場から、逆問題で考えるべき課題として、一意性、安定性、存在、再構成が挙げられている。 このうち、最初の3つに関して、伝統的に解が「一意で、安定で、存在する」場合にはアダマールの意味で「適切」 であるという。これに関して著者は次のように注意を促す:
そこで,特に読者にお願いしたいのは, 逆問題においては伝統的な偏微分方程式論におけるようなアダマールの意味での適切性, とりわけ存在の問題にこだわらないでほしいということである. いわゆる順問題,逆問題それぞれにおいてパラダイムが異なるのが自然なことであり, 一方の規準を他方にそのまま当てはめるのは賢明なことではない.
わたしはこの主張を読んで安心した。
以降の数学的な解析は全く理解できなかったが、おもしろいこともあった。 p.98 以降で述べられているのは、熱方程式の逆問題で、解の精度を上げようとして、 温度計測のサンプリング間隔をむやみに短くしても結果は保証できないこと、 観測誤差に応じて適切なサンプリング間隔をとることで、 差分近似した結果が真の解を最適次数で近づくことが保証できる、ということだった。
第3章では変分法を用いた逆解析が述べられている。
書 名 | 逆問題の数理と解法 |
著 者 | 登坂宣好・大西和榮・山本昌宏 |
発行日 | 1999 年 11 月 30 日(初版) |
発行元 | 東京大学出版会 |
定 価 | 3800円(本体) |
サイズ | A5版 |
ISBN | 4-13-062906-9 |
その他 | 草加市立図書館で借りて読む |
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