「はじめに」から引用する:
本書のテーマは,不完全性定理である. ゲーデル生誕 100 周年記念シリーズ『ゲーデルと 20 世紀の
論理学 』 (全 4 巻)の刊行も好評のうちに後半に入り,この第 3 巻では,いよいよハイライトの定理と,それに関連した算術の形式体系の話題を扱う.
私は数学の本にはいつも畏敬を持って接している。とくに、論理学(数学基礎論、数理論理学、ロジック)の本についてはそうである。 生半可な理解がかえって真実と遠ざかってしまうからだ。
第 Ⅰ 部の「第一不完全性定理と第二不完全性定理」を読んでいて、ゲーデルの `beta` 関数の解説がなされていた。そこには次の補題があり、ほっとした。
補題 1.3 1 以上の自然数 `m, n` が互いに素であるならば,`m * x - n * y = 1` なる自然数 `x, y` が存在する.
本書にはこの証明も載っている。私には証明できないが、初等整数論でかならずお目にかかるこの命題を見て、ほっとした。
私には第 Ⅱ 部の「逆数学」が興味深かった。といっても、内容はまるでわからない。なぜ興味をもったかというと、 p.117 にある次の問題がおもしろいと思ったからだ。
問題 A 既知である任意の数学の定理に対して,どの(数学的)原理があればそれを証明できるかを決定せよ.
というのも、私が昔関数解析を勉強していたとき、教科書にツォルンの補題が出ていて面食らったことがあったからだ。ツォルンの補題を認めないと、 関数解析で重要な定理であるハーン-バナッハの拡張定理が成り立たないから当然なのだが、いろいろな数学があるとわかって畏怖したのだった。
このページの数式は MathJax で記述している。
書名 | ゲーデルと 20 世紀の論理学 論理学 ③ 不完全性定理と算術の体系 |
編者 | 田中一之 |
著者 | 田中一之、鹿島亮、山崎武、白旗優 |
発行日 | 2007 年 3 月 15 日 初版 |
発行元 | 東京大学出版会 |
定価 | 3800 円(本体) |
サイズ | A5版 |
ISBN | 978-4-13-064097-8 |
その他 | 草加市立図書館にて借りて読む |
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