伊藤 昇 : 復刊 有限群論

作成日 : 2022-02-03
最終更新日 :

概要

序文から引用する :

この講義で Frobenius 群 - Zassenhaus 群という素材をえらんだ動機のいくつかを述べてみよう.

本書の書評は下記にある:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sugaku1947/26/4/26_4_370/_article/-char/ja

日本人の名前

序文をみてみると、日本人の名前と思われるローマ字が出てくる。

Frobenius 核が可換な場合は Zassenhaus により 1930 年代にすでに分類が完成していたのであるが, 一般の場合には 1960 年ごろ Feit,Suzuki により完成された. とくに Suzuki による Suzuki 群(Suzuki 型 Zassenhaus 群) の発見は正に有限単純群分類の歴史において一時機をかくした.

この Suzuki とは、鈴木通夫を指していると思われる。

練習問題は本文中にある。解答はない。

フラクトゥール

pp.1-2 は序章 準備なのだが、早速読めない。

A 1・1 定義 `frG` を空集合ではない集合とする. Descartes 積 `frG times frG` で定義され,`frG` の値を取る関数 `f` はつぎの三条件を満足するとき, 群算法と呼ばれる : (中略)
A 1・2 定義 `frG` の部分集合 `frH` は `frG` の乗法に関して群を作るとき,`frG` の部分群と呼ばれる. たとえば `frG, frE = {E}` は `frG` の(自明な)部分群である.(中略)
A 1・4 定義 `frH, frK` を群 `frG` の部分群とする.(後略)

フラクトゥールはただでさえ読みにくいのに、この復刊シリーズのフラクトゥールは輪をかけて読みにくい。 これらが使われている場所から、`frG, frE, frH, frK` がそれぞれ `G, E, H, K` のフラクトゥールだと推理するのだが、これでいいのだろうか。この復刊シリーズのフラクトゥールは、
http://toxa.cocolog-nifty.com/phonetika/2004/09/post-5b7a.html
にあるフラクトゥールに似ている。これからは、この写真と首っ引きしながら本書を眺めよう。

Galois の定理

p.7 ですでにガロアの定理が出てくる。

A 3・5 定理 (Galois) `n=5` のとき `A_Omega` は単純群である(`|A_Omega|=60`). (後略)

`A_Omega` の定義は p.5 にある。

さて偶数個の互換の積として表示される置換は偶置換と呼ばれる. `Omega` 上の偶置換全体の集合は `Omega` 上の交代群 `A_Omega` といわれる `S_Omega` の指数 2 の部分群を作る.

日本語がわからない。まず `Omega` というのは `Omega = {1, 2, cdots, n}` である。 `S_Omega` は `Omega` 上の対称群である。

Fitting の定理

p.14 に Fitting の定理がある。

A 8・2 定理 (Fitting, 1938) `frG` を可換群,`frN` を `frG` の Fitting 部分群, すなわち最大巾零正規部分群(巾零根基ともいわれる)とすると,`C(fr(N)) sube fr(N)` である. (後略)

これは、吉野雄二「基礎課程線形代数」 にあった「フィッティングの補題」(の一般的な場合)だろうか。

復刊シリーズ

数式記述

このページの数式は ASCIIMathML で記述している。

書誌情報

書名復刊 有限群論
著者伊藤 昇
発行日2001 年 3 月 1 日 復刊 1 刷発行
発行元共立出版
定価3,500 円(本体)
サイズA5 版 199 ページ
ISBN4-320-01668-8
NDC411.63
備考草加市立図書館で借りて読む

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MARUYAMA Satosi