「学習の手引き」より
本書は,代数を通した数学の入門書であり,解析学や幾何学と関連する話題にも積極的に触れてある.
一方では,「代数入門2」で抽象的に取り扱うための準備も兼ね備えている.
とある。言い忘れたが、本書は「岩波講座 現代数学への入門」全 10 巻( 20 分冊)
のうちの第2回配本のうちの 1 冊である。本書は、
神保道夫著「複素関数入門」
と同時配本である。
pp.2-4 で、累乗について述べられている。p.3 では累乗については,後に詳しく述べることにする
とある。後というのはどこかというと、p.39 以降である。
それはそれとして、いつも気になっていてその都度解消しているという循環を繰り返していることがある。 それは、累乗の累乗だ。`a^(m^n)` という式が、`(a^m)^n` なのか、それとも、`a^((m^n))` なのか、それとも、 気になってしまうということだ。考えてみて後者だということがわかるからだ。これは、 そう決められているというようにいってもいいし(ただしこの本ではそのようにはいっていない)、 間接的には、本書 p.3 の例題 1.1 (2)にある次の公式が成り立つことでも裏付けられる。
本書で累乗の累乗は、p.18 でフェルマ数 `F_n` の定義で早速現れる:
p.16 では、次のような定義がある:
整数 `n` が整数 `p` で割り切れるとき,すなわち
`n = pq`を満たす整数 `q` があるとき,`p` は `n` の約数(divisor)であるという. このとき `q` も `n` の約数である.また,`p` を中心に考えるときは,`n` は `p` の倍数(multiple)という.
ここは問題ないように見える。さて、p.18 では、素数が無数に存在する証明がいくつか掲載されている。 そのうち、クンマーによる証明を一部引用する。
素数は有限個しかないと仮定して,上と同様にすべての素数を
`p_1, p_2, p_3, cdots, p_N`と記す.`N = p_1p_2cdotsp_N`とおき,`N-1` を考えると,`N-1` は `p_1, p_2, cdots, p_N` のいずれかで割り切れなければならない. `p_j` が `N-1` を割り切るとしよう.`p_j` は `N` も割り切るので(後略)
数学書には「`q` は `p` で割り切れる」という表現と同じぐらい「`p` は `q` を割り切る」 という表現が出てくる。しかし、整数の除算に関して、私の語感では「割り切れる」は頻繁に使うが 「割り切る」は使えない。今の算数・数学教育は、「割り切る」も普通に使うようになっているのだろうか。
少しだけ「問」を解いてみた。p.31 にある問6である。
問6 次の合同式を示せ.
(1) `2^2 -= 1 quad (mod 3)` (2) `2^4 -= 1 quad (mod 5)` (3) `3^4 -= 1 quad (mod 5)` (4) `4^4 -= 1 quad (mod 5)` (5) `1*2*3*4 -= -1 quad (mod 5)`
どう答えればいいだろうか。
以下はこわごわ書いた解答である。
(1) `2^2 - 1 = 3` は 3 で割り切れる。
(2) `2^4 - 1 = 15` は 5 で割り切れる。
(3) `3^4 - 1 = 80` は 5 で割り切れる。
(4) `4^4 - 1 = 255` は 5 で割り切れる。
(5) `1 * 2 * 3 * 4 - (-1) = 25` は 5 で割り切れる。
この問 6 の解答はなかった(p.177 の問解答では、問5のあと問7となっている)ので、ここで書いてみる気になった。
p.177 問解答、第2章の問1で(1)`q = 4{3*5*7cdots(p-1)}+3`
となっているが、
`q = 4{(3*5*7cdotsp)-1} + 3` が正しい。
これは誤植ではないが、あれ?と思った記述がある。付録 数とはなにか から、pp.173-174を引用する
素数は有限個しかないと仮定して,上と同様にすべての素数を
`m = a_0 + a_1p + a_2p^2 + cdots + a_kp^k`と `p` のベキを使って一意的に展開できる.これを p 進展開という. このとき,
`0 le a_j le p-1, quad j = 0, 1, cdots, k, quad a_k != 0`
`a_j = [(m - a_0 - a_1p - cdots - a_(j-1)p^(j-1))/p^j]`であることに注意する.
ここで、`j = 0, 1, cdots, k` の文字 `j` は、直前の式では使われていない。 しかし直後の `a_j` の帰納的な式を導くためには必要な言明だったということがわかった。ここでは、 `m = sum_(j=0)^k a_jp^j` を補えばいいだろう。
このページの数式は MathJax で記述している。
書 名 | 代数入門1 |
著 者 | 上野 健爾 |
発行日 | 1995 年 11 月 6 日 |
発行元 | 岩波書店 |
定 価 | 2分冊合計定価 3495 円(本体) |
サイズ | A5版 191 ページ |
ISBN | |
その他 | 越谷市立図書館にて借りて読む |