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音楽の三大要素の最後は、音量。
まあ、当たり前って言えば当たり前ですよね。
むかし、コンピュータでBasicで音を鳴らす時に指定するのは、
テンポ(時間的な事)、音程(音の高さ)、音量の三つだった事からもわかるように、
最低限の要素なのです、この三つは。
まあ、実際、われわれ生身の人間が音楽を演奏する時には、
もう少し、生臭い要素が加わるわけですが、
基本は、この三つです。
この、機械でなければ正確に出来ない事を、
不安定で不確かな生身の人間が無理矢理当てはめようとする事に、
トレーニング的な意味での音楽をやる意義のうちのひとつが込められているのだと思います。
音量と簡単に言いますが、
実は、これがちゃんと出来てるヒトっていうのは、
アマチュアでは、ある程度うまいヒトに分類されますね。
単純に音量を測る機械を持ってきて比較するだけでは、
ダメなのですよ。
dBでは、測れない要素が多分に存在しています。
特に、弦楽器の場合、音量を下げようとして、
単純に、弓から楽器にかかる圧力を減らしても、
意外と、摩擦する音だけは減らなかったりして、
要は、単純に音を小さくするだけではダメで、
オノレの音が持つとんがった部分を無くさないと、
音量は落とせないものです。
大きい音を出すのも、
ただ圧力を増やしたり、弓の移動量を増やしてもダメなわけで、
あらゆる共鳴を利用しなければならないわけです。
単に存在感を出すだけだったら、
圧力を変えなくても、角張った音を出せばいい場合だってあります。
オレ自身の音は、最近、よく大きいっていわれるようになったんですけど、
自分でもわかってるんです。
これにはわけがあって、
オレが楽器を始めた頃に非常に影響を受けたヤスドン(仮名)という先輩がいて、
その人が「モーモー、楽器うまいヤツっていうのはなあ、音がでかいんだよ」って、ある時言ったんです。
で、おれは、そのことばを逆説的に捉えて、
「大きな音で弾けばうまくなる」と勝手に解釈して、今に至るわけです。
でも、ヤスドンが言ったのはそういう事じゃなかったんだろうなって、
大学3年の時に気付いたのです。
オレと同年代でおそらく一番うまいヒト、その人と一緒に弾く機会があって、
恐ろしい体験をしたのです。
そいつは、身体もちっちゃくって、力もホントになさそうな感じ。
で、見た感じ、わりとシュルシュル弾くんですけど、
音がよく通る。
となりのとなりのとなりくらいで弾いてるのに、
そいつの音だけ、ハッキリと認識できるんですよ。
その時に弾いたオーケストラは、
オレが大学時代に参加した最高レベルのオーケストラなわけで、
当時、普段弾いてる自分のオーケストラとは比べ物にならないくらい、
全員うまいわけです。
明らかに、自分が一番未熟だと認識できるレベル。
そんな中でも、そいつの音だけが別格にハッキリ聞こえるんです。
こういう事をヤスドンは言いたかったんだろうな。
でも、一度決めた方針を曲げないで、
大きな音を目指した結果、
"
Sempre ff"(常にフォルテッシモ)を自分で名乗るようになってしまいました。
とまあ、自分の音の大きさのエクスキューズのなってしまいましたが、
オーケストラにおいて重要なのは、
引く時は引く、出る時は出る。
そして、音の固さ、音質も音量を決定する重要な要素。
ということだと思います。