敷地にあった古屋を解体します。
小さな梅の木は今回の計画でも取り入れられそうですので残してもらうこととなりました。
更地になったところで建物の外周位置にロープを張って位置と大きさを確認します。
地鎮祭を行いその際に建て主さんにも建物の位置を確認してもらいます。
今までは図面上での理解のみですがここではじめて実際の土地にどの様に建つかを確認してもらうことできるのです。
地鎮祭は京都伏見稲荷の分社でもある地元のおいなりさん「鵠沼伏見稲荷神社」にお願いしました。その際に鎮め物といわれる神様への捧げ物を受け取り建物基礎の下に埋めるのですが以前より何が入っているのか気になっていました。なんだか見てはいけないような気がしていましたが神主さんに聞いてみると見ても良いとのことでしたので開けてみました。
中には金属板で出来た人型、盾、矛、小刀、長刀子、鏡、お金のミニチュアが入っています。人型は生贄の代わりだそうです。(ちょっと怖い、、、)
建物の位置と高さの基準とする定規を空中に作ります。丁張り(ちょうはり)とか遣り方(やりかた)といいます。
2m程度の間隔に木杭を打って同じ高さ(水平)に印を付け板を打ち付けて定規とします。ここで失敗すると傾いたり歪んだ建物になるので注意です。
昔は溝のある細長い木の棒に水を張って水平を測っていたので大変だったと思いますが今はこの様な機械があるので簡単です。
三脚の上に乗った装置の頭の部分からレーザー光線が水平に回転照射されその光りを受ける受光部を杭にあてがいながら上下にスライドするとピッタリ光りを受けたところでピピッと鳴り同じ高さを各部にマークすることが出来る仕掛けです。
ふだんなんの疑いもなくこの作業をしていますが建物は水平垂直を基準としなければいけないのか。もっと自由にデザインしても良いのではないかと思うことがあります。
べた基礎を作ります。 重要なのは堅い一枚の鉄筋コンクリート板(スラブ)を作ることです。
建物の重さをこの一枚板で支えることとなります。 コンクリートを打ったときに厚さのほぼ中央になるように鉄筋を地面から浮かせて組み立てます。
コンクリートがこぼれていかないように外周に型枠を立てておくのですがコンクリートの圧力に負けないようにパイプや金物で支えます。
翼竜の首のような金物が実直な感じでかわいい。
スラブができたので立ち上がり部分の型枠を立て土台や柱などを留めつけるためのボルトをセッティングします。
コンクリートを打ってしまうと位置の変更が難しいので一本一本確認していきます。
基礎が打ち上がりました。 土台を敷く前に土台パッキンと呼ばれる部材を敷き込みます。
すきまを空気が流れる物と気密を保って通気が無いものとありますが設計によって使い分けをします。この場所は気密タイプを使います。アンカーもきれいにセットできました。
上棟に先立ち基礎の上に土台を敷いていきます。
無造作に放り投げてあるように見えますが組立の順序と場所を把握してやりやすいように置いてあるのです。
流通している材木の長さはある程度の長さに切ってあります。 一般的には3~6m程度となっています。
ではそれ以上長い場所の材料はどうするかというと継手という接続部を作りつないで長くします。当然つなぐとその場所が弱くなるのでそれを補うつなぎ方がいろいろとありますがあまり難しくなくある程度の強度が期待できる継手として「腰掛鎌継ぎ」という継ぎ方が良く用いられます。
お互いの凹凸部分が引っかかるように作り組み合わせます。
いよいよ上棟です。 クレーンを使って重たい材料も軽々と素早く組み立てていきます。
柱の上に梁をのせるのですがそれぞれの部材がかみ合わされるようにホゾと呼ばれる凹凸を作って差し込みます。ほとんどの部分がこの形状ですが
四隅など角の部分はこの形状に加工します。 出っ張りの部分が少し小さいのがわかりますか?
梁の端部は大きなホゾですと断面欠損が大きくなってしまうのでこの様に小さめのホゾとして強度を保ちます。
上棟時に建て主さんにお祝いのお酒を差し上げました。
清酒が一般的ですがこの度はテキーラです。 建て主さんの好みでもあり建物の設計過程でキーワードにもなっていたお酒です。
紅白ならぬ金銀のテキーラででお祝い申し上げます。
少し大きめの庇が突き出ます。丈夫になるように構造体の骨組を突き出させました。
そのままですとゴツい感じになってしまうので先端を斜めにそぎ落としデザイン的な配慮もしてあります。
実はこの形状は曲げモーメント図の形状にも一致し力学的にも理にかなっているんです。
屋根の下地工事が進み天窓が取り付けられました。
この屋根は屋根裏の結露を防ぐ特殊な2重構造となっています。 どの様な仕掛けかは企業秘密です(ˆ-ˆ)
屋根から突き出た壁の上端部分の下地を内側に向かって少し斜めに削ります。
この部分には晴れている日に汚れが溜まり雨が降るとその汚れが雨水と共に流れてきます。その汚れが外壁側に垂れて汚れてしまうのを防ぐ役割があるのです。
屋根の仕上げは鋼板を使いますがその前にルーフィングと呼ばれる防水シートを敷きつめます。鋼板が防水の役割を担っているように感じますが実はこのルーフィングがとても大切なのです。
骨組とそれらに取り付ける金物の工事が終わったので審査機関の中間検査を受けます。
無事合格です!
外壁の防水性能を高めるために透湿防水紙を張ります。
湿気は通すが水は通さない引っ張っても破れない紙です。 これで外壁からの雨水侵入も無くなりますので内装工事に進むことが出来ます。
骨組に紙が張られて線から面の構成になってきましたので全体像が見えて来ました。
省エネルギー対策等級4相当の住宅とするため仕様を満足するように断熱工事を進めます。
玄関などの土間になる部分は断熱上不利な部分となりますので発泡スチロールのような断熱材を使って断熱します。工務店さんの手元にたまたま良い材料がありましたので通常の3倍近い厚みの材料を使ってくれました。
天井下地の骨組が出来てきました。
壁の透湿防水紙が陽の光で照らされて障子のようにきれいです。
外壁の防火性能を上げるため室内側には石膏ボードを張る仕様になっていますが屋根裏になってしまうところにも張る必要があります。
天井の下地を組む前に張っておかないと手間がかかりますので先行工事を行います。 見えなくなるところですのでラフな仕事をする大工さんもいますがここの大工さんはとてもきれいに作ってくれました。
2階の配水管が1階の天井裏を通ります。
水を流した時の音がなるべく出ないようにパイプに綿入りの着物を着せます。
玄関脇の納戸の壁には小さな窓がひとつしかありません。 壁面を最大限使うには窓が邪魔になるのです。 でも光りも欲しいし空気も流したいので開閉式の天窓を付けました。
外壁に木摺(きずり)と呼ばれる杉の小幅板を張っていきます。
モルタルを塗る下地として作るのですが透湿防水紙から浮かせて張りその隙間を通気層とし外壁の通気性を確保します。
換気扇や給気口などのパイプが外壁を貫通します。
当然透湿防水紙にも穴を開けて通すのですが雨水が入りにくくするための処理が必要です。特殊なシール部材を使って納めました。
この建物は省令準耐火の仕様として設計してあります。
条件にもよりますが火災保険が約半額となるんです。 ただし防火の条件が厳しくなりますので仕様は一般よりアップします。 1階の天井も強化石膏ボードとする必要があるので設計上必要な部分に使っていきます。
左官仕上げの色とテクスチャーの検討です。
サンプル板を作って実際に現場で確認します。 日向と日陰で表情が変わりますので双方並べてチェックです。
その結果テクスチャーは荒目、色は設計時のイメージ通りイエロー系となりました。
塗り壁の外壁を作るために「メタルラス」という金網を張ります。
今回は2種類の金網を重ねて張ってもらうことになりました。 ひび割れ等に強くなります。
一重目はひし形の平面的な金網です。
二重目はひし形でさらに波打っている立体的な金網となります。
金網そのものも幾何学的でとても美しいです。
大きなホチキスで二枚重ねて留めていきます。
前回張ったメタルラスにモルタルを塗ります。
コテでギュッとおさえて金網の隙間に押し込むように塗っていきます。
モルタルが固まるとラス網と一体になって左官壁になるんです。
玄関横に土間床の納戸件作業スペースがあります。
趣味のスキーのワックスがけなどの作業もにおいや汚れを気にすること無く行うことができます。壁天井共に合板仕上げとなっていますので棚やフックなどを好きなところに設置することも出来るんです。
もう少しラフな仕上がりを想定していましたが良い合板を使ってくれましたので上等な仕上げとなりました。これでしたら個室などにも使えそうです。
郵便物を外に出なくても受け取れるよう納戸の外壁面にポストぐちを設置しました。
最終的にはポストケースがセットされて見えなくなってしまう場所ですが大工さんがルーターを使った丁寧な仕事をしてくれました。このまま見せたいくらいです。
玄関ドアの幅を大きめに設計しました。
開き戸ですと少々邪魔になるため引き戸のデザインです。そのために一部が建物内部に引き込まれる仕様となっていて雨水が吹き込む恐れがあります。
そこで排水用の溝を作りました。ここに大工さん、建具職人さん板金職人さんなどが細工を施していきます。
薄い壁が独立して立つ場所があります。
木の骨組だけですと反ったりばたついたりしがちです。 そこで小さなスチール部材を補強材として内部に仕込みます。
出来てしまえば気がつくことはありませんが現場の知恵のひとつです。
部材が直角にぶつかる部分を納める方法のひとつです。
それぞれ45°の角度で切断しピタッと合わせると切り口がどこにも出てこないようなデザインにすることが出来ます。
加工精度が要求されるのですがシャープな印象を作ることが出来ます。
天井に設備を納めるための穴を開けます。
大きい穴がスピーカー用。小さい穴がダウンライト用です。 音響、照明のバランスを考慮して位置決めしています。
内装の漆喰の色味と木部枠材に塗る塗装の色をサンプルを作って確認しました。
最近では色付きの漆喰もありますが伝統的な漆喰そのものの白色と染色系の白色塗装に決定です。
2階のトイレには小型プロジェクタによるプロジェクションを行う予定です。 壁紙には反射率の高い専用の壁紙を使いました。
クライアントは何か面白いことを考えているようです。
今回の畳は通常の長方形の半分の長さ正方形の半畳たたみです。縁なしで仕上げます。
縁なし畳みの表としては「琉球表」と「目積表」がありますがスッキリなめらかにするため「目積表」を使います。通常の畳表は縦糸2本で一目を織りますが、目積表では縦糸1本で一目となり目が細かくなります。模様の向きを互い違いにして市松敷きで仕上げます。
サンプルからも新しい畳のあの香りが漂ってきます。日本の原風景の香りのうちのひとつでしょう。大切にしたいと思います。
以前選んだ色の吹付材で外壁を仕上げます。
面積が大きくなるとサンプルより少し明るくなる印象です。 色選択の時にはその分も考慮に入れておきました。
室内漆喰壁の下地を整えます。
石膏ボードの繫ぎ目や角の部分をギプスのように樹脂製の定規や網目状のファイバーテープなどを貼り、パテで馴染ませてひび割れや変形を防ぎます。
伝統的な工法もありますが最近はこの方法が多いです。
足場が外されて全体の姿を見ることが出来る様になりました。
想定通りの色で良い感じです。
漆喰の本塗りが進んでいます。
まだ塗りたてなので黄みを帯びてテカっていますが時間とともに白くマットな感じになっていきます。
接着成分として「つのまた」という海草が入っているので磯の匂いがします。
外部のデッキには「マニルカラ」というハードウッドを使います。
とても目の詰まった固く重い材料で無塗装、雨ざらしでも大丈夫です。
駐車場部分も芝生としたいので保護のデザインとして縁石を並べます。
隙間に芝生を植えます。
エアコンの室外機はあまり見せたくありません。 でも快適な生活を求めると必要になることもあります。
そこでエアコンの室外機を建物の裏側に集め 配管はすべて隠ぺいしスッキリと仕上げます。
なるべく迷惑がかからないように隣家の窓や部屋の配置にも考慮してあります。
玄関タイルの貼り方は「やはず貼り」です。 垂直水平が多い建築の中に動きを作ります。
玄関ドア枠の角とタイル目地が合うように割り付けしてもらいました。
スチールパイプのオリジナル手摺です。
踊り場部分は30cm程の短い手摺を縦に付けてあります。 同じものをもう一つ作ってもらい玄関の補助手摺としました。
以前にキヤアンティークスで選んだ家具と別のアンティーク家具屋さんで選んだ家具が搬入されました。
ダイニングチェアの張り地はインテリアテーマカラーのグリーンに張り直してもらってあります。
ヨーロッパの家具には靴箱というものが存在しませんがサイドボードを靴箱として応用します。
玄関へのアプローチの部分は深い陰影を表現するために外壁から凹ませアルコーブを作りました。その側面に納戸へのドアがあります。
通常のドアを付けてしまうとアルコーブの効果が薄れてしまうので外壁の一部が開く様なデザインとしてあります。
ここが、、、
こんな風に 開きます。
外構に使う植栽をクライアントと一緒に選びにいきました。
海や夏をイメージした植栽となると普通の植木屋さんだとなかなか見つかりませんがこの度は横浜の植木屋さんにお世話になりました。
いろいろ種類があって目移りしましたがドラセナ、ユーカリ、グレベリアに決定です。
先日選んだ植栽が現場に搬入されて植え付けとなりました。
玄関前のシンボルツリーは赤茶色のドラセナです。
外構のフェンスはマニルカラの角材を立ててステンレスのワイヤーを張ってシンプルなデザインとしました。
芝生や植栽が根付いて自然な感じになるのが待ち遠しいです。 まだ多少の工事が残っていますがほぼ完成です。
現場監督をはじめ家づくりにご協力いただいた職人の皆様、お陰様で良い建築となりました。ありがとうございました。