メキシコ北部大縦断の旅−L.A.からメキシコシティへ
(1998/9/12〜1998/9/27)16Days
6.チワワ登山鉄道の旅(Ferrocarril Chihuahua/Creel/1998/9/17)
朝3時起床、とても眠い。外はまだ真っ暗だ。2人もぼーっとしながら黙々と支度をした。5時にエルフエルテ行きのバスが出るとのことで、乗り遅れないように4時半に着くように部屋を出た。朝からなにも食べてなかったので、ターミナル脇の露店でミルクコーヒー(Café
con leche)を頼んだ。メキシコのミルクコーヒーは、ミルクをまず始めに沸かし、それをコップに並々とついで客にくれる。客は自分の好みに合わせて、インスタントのコーヒーを入れるといった具合になっているところが多い。なるほど、ある意味ではそのほうが合理的かもしれないな、とメキシコ式にちょっと感心した。
しばしそこで待っていたが、結局バスが出発したのは6時半過ぎ。昨日何人もの人に5時と確認したのにこの始末。朝からくたくたになってしまった。メキシコ人たちは、文句も言わず次々に乗り込んでいく。メキシコ的時間の流れ方は、やはり日本のそれとは違っているようだ。あるいは日本がせかせかし過ぎているのでは・・・考えるとわかんなくなってくる。
エルフエルテでバスを乗り換え、8時半に駅にやっと到着した。駅といっても駅舎がぽつんとあるだけで、日本で言うところのホームはまったくない。2本あるレールの1本には、チワワ登山鉄道の青い列車が今か今かと出発を待っていた。さっそくPrimera
Claseの客車に乗り込み外がよく見えるきれいな窓の席に陣取った。まだ座っている人はまばらだった。途中から乗り込んで来るのかな。さあ、いよいよチワワ登山鉄道が出発する。
9時をすこし回って、何のアナウンスもなく列車は静かに出発した。車窓の景色はすばらしいと聞いていたのでとても楽しみにしていたが、朝早かったこともあり出発して、なんとすぐ眠り込んでしまった。江川は一睡もせず、その壮大な景色を何枚も写真に収めていたらしい。こんなとき、いつでもどこでも寝れてしまうこのわたしの特技は足を引っ張ってしまう。午前中はほとんど夢の中だった。口を開けて爆睡していたらしい。まああとで写真で見れればいいやと寝ぼけた頭で思った。帰国後、その写真のなかにはそのまぬけな顔もばっちり入っていた。
昼にはやっと眠気も収まり、車窓から見える景色をぼーっと眺めていたが、15時過ぎディビサデロという駅に到着した。ここで15分ほど停車するらしい。乗客はほとんど外に出て軽食を買ったり写真を撮ったりしている。このディビサデロという駅には銅の大峡谷があり、その景色はアメリカのグランドキャニオンに勝るとも劣らないものらしい。我々も列車が停車すると外に飛び出して、その大峡谷が見える展望台のある場所まで駆け下りていった。目が一変に覚めてしまった。果たしてその景色は形容することばに困ってしまうほどすばらしいものであった。空気はとても澄んでいて空は一面真っ青。まるで写真や絵画でも見ているようで、自分たちもそこに吸い込まれてしまう壮大さがそこにはあった。グランドキャニオンなるものは名前しか知らないが、この景色にも劣らないなんてぜひ一度見てみたいものだ。土産屋で記念に手作りの首飾りを買った。20ペソだった。その隣には日本の5円硬貨が首飾りになって店頭に並んでいたのが面白かった。穴が空いている硬貨が外国で珍しがられるのは知られた話だが、ここメキシコでは5円が「ご縁」があるというジンクスをも知っているとのこと。すこしうれしくなった。その首飾りは400円くらいしたのだが・・・
連なる山々を越えるため、列車はのろのろと上がっていく。聞けばこの鉄道は一時期中断したのも含め90年もの歳月と莫大なお金を使って開通したらしい。全長650KMにも及ぶチワワ太平洋登山鉄道。こんな山中に線路を敷設していった当時のMEXICANOたちに敬意を表したい。そんな気を素直に起こさせるほど難所だらけなのだ。
列車は夕方5時半を過ぎ、今日の目的地のクリールに到着した。駅でつかまった子供の客引きに連れて行かれるがままにMargaritaというホテルのドアをたたいた。そこはドミトリーと個室兼用のホテルだった。始めは1人40ペソという安さに引かれドミトリーを希望したが、ベットが1つしか空いていないとのこと。仕方なく値切って個室に泊まることにした。朝・夕と2食つきなのでまあよしとするか。
部屋も決まり一段落ついた後、さっそく近くを散歩することにした。高地があるせいか日が落ちると、一気に寒くなってくる。通ってきたティファナやロスモチスとはやはり違う。町というより村という感じだ。でもこんなところにも人が集まってがんばって生きているんだなーなんて変な感慨を覚えてしまう。クリールの駅の反対側にぽつんと抜き出た山の頂には、イエス像がライトを浴びて妖艶に光っていた。