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名演6月例会 東京芸術座制作公演 

熊井啓 監督作品『日本の黒い夏−冤罪』(製作・配給/日活)の原作
作 平石耕一 演出 西川信廣

6月25日(水)6時45分
  26日(木)1時30分・6時30分

  名古屋市民会館中ホール 地図  
1 会費 
    
  月額 2600円 
  22歳以下 2000円 
  高校生以下 1300円
2 入会金 
  2900円 22歳以下 2300円 
  高校生以下 1600円
                       
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※神部俊夫役の山本亘さんが急病加療中のため降板。かわって林秀樹さん(文学座)がつとめます。



1994年6月27日松本サリン事件が起こった。その日からテレビ各局の「ニュース戦争」が始まった。
結局、テ・レ・ビ・ハ・ナ・ニ・ヲ・ツ・タ・エ・タ・ノ・カ

 北アルプスの玄関口で知られる観光都市「松本」。
1994年6月27日深夜。閑静な住宅都市を毒ガスのようなものが襲い、死者と多数の重傷者をだす事件が起こる。
松本サリン事件である。
この日からテレビ各局の「ニュース戦争」が始まった。
第1通報者の自宅上空にヘリコプターが舞い、何百人ものメディア関係者が、病院、警察、そして第1通報者宅を取り囲む。
しかし、そこから送りだされた情報とは…。
そして1年が過ぎた。市内の高校の放送部が、この事件の報道に携わった記者にインタビューするため、地元のテレビ局をたずねた。
取材を拒否されると覚悟していた高校生のカメラの前に、報道部長と記者たちが座る。
「なぜ、誤報が流れたのか」
「なぜ第1通報者から対象を切り換えられなかったのか」
次々に出される素朴な質問に、記者たちは、事件の発生当時を振り返りながら、静かに語り始めた。
「いったい私たちは、そしてテレビは何を伝えてきたのか」と自問しながら。
そこには「人間」としてのテレビ人がいた。



その時、僕は、日本にいなかった 平石耕一


 松本サリン事件が起きたとき、僕は、イギリスのスカーバラという港町に暮らして半年過ぎたところだった。帰国したのが、阪神淡路大震災の少し前。それからすぐ、地下鉄サリン事件が起きた。
 僕が、松本サリン事件のいきさつを知ったのは、それからである。
 劇化の話があり、いったいどういう事件であったのか、説明を受けた。報道合戦が冤罪を形成していったという話であった。マスコミ批判をすればいいんだなと、僕は、その時思ったものである。ところが、ことはそんなに簡単ではなかった。
 松本美須々ヶ丘高校放送部の諸氏も最初はマスコミ批判から入っていったそうである。ところが、取材を重ねていくうちに、自分たちは、報道の仕組みを知らずに鵜呑みをする受け手であったことに気がつかざるをえなかった。つまり、自分達も冤罪に手を貸していたのである。
 前置きしたように、僕は、その時日本にいなかった。言ってみれば、松本サリン事件報道の圏外にいたわけである。それが幸いしたのかもしれない。僕は、放送部諸氏のたどり着いた結論に素直にうなずけたのである。
 僕は、高校生がテレビ局の記者たちに対等に立ち向かう勇ましい姿を書こうと決めた。だからだろうか、この頃、高校生が好きになって、誰それ構わずに話しかけたくなる気持ちを抑えることが難しくなってしまった。高校生っていいな。

演出にあたって 西川信廣

 NHKがテレビの本放送を開始したのが1958年(昭和28年)。それから半世紀の間にテレビは瞬く間に私たちの生活に深く入り込んだ。いま、新聞を取っていない人、ラジオを持っていない人はいても、テレビを持っていない人はまずいないだろう。今やテレビは私たちの生活の一部であり、好きか嫌いかは別にして、テレビから流される多様な情報は私たち現代人の生活に必要不可欠なものとなっている。特にニュース報道は、私たちの情報源として新聞やラジオといった他のメディアを圧倒している。私たちはテレビ情報を頼りにしているのだ。
 松本サリン事件が起こったとき、私も河野さんを犯人だと思いこんだ。それが誤報だと知ったとき、「テレビも聞違える」ことを知った。もちろん、松本サリン事件の場合、テレビに限らず新聞もラジオも「河野さん犯人説」に傾いていったのだからテレビばかりを責めるわけにはいかない。しかし、テレビが果たした役割が大きかったことも事実である。
 今回、「松本サリン事件のテレビ報道をめぐって」を題材として舞台化しようとの話しがあったとき、私は何故テレビという巨大メディアが間違いを犯したかに興味があった。そして、台本作りの過程での議論やテレビの現場の取材からその危うさを知った。それは、現場に関わる一人一人が常識と理性を持った人間であっても、組織として動き始めたときに起こる過ちである。そして、もう一つ忘れてはならないのは情報を受け取る私たちの問題である。「犯人」を早く知りたいという目に見えない世間の声、それは間違った情報をもあたかも真実のように押し上げていく。
 私はこの作品を単なるマスコミ批判としてとらえていない。人間が作り出すものは、たとえそれが権威あるものであっても間違えを犯す。そのことをお互いに考えてみる作品だと思っている。


キャスト

笹野 誠(報道部長 通称コンさん) 鴨川てんし(燐光群)
津山芳美(デスクチーフ 通称ヨッシー) 水野 ゆふ(木山事務所)
浅川浩司(記者 通称コージ) 得丸 伸二(文学座)
野田太郎(記者 通称ノロ) 村治  学(文学座)
花沢 佳(記者 通称ハナケイ) 山崎 美貴(文学座)
神部俊夫(会社員) 林  秀樹(文学座)
吉田警部 浦山  迅(東京芸術座)
弁護士 梁瀬 龍洋(東京芸術座)
黒田教授 山上  優(さいど事務所)
女医 武田  薫(東京芸術座)
ヒロ(高校二年生) 白鳥  哲(文学座)
エミ(高校二年生) 山谷 典子(文学座)
カメラマン 水野 大助(ショウデザイン舎)

スタッフ

平石 耕一
演出 西川 信廣
装置 幡野  寛
照明 森脇 清治
音響効果 中嶋 直勝
衣裳 山田 靖子
舞台監督 幡野  寛
原作 「テレビは何を伝えたか」
−松本サリン事件のテレビ報道から−
松本美須々ヶ丘高校放送部制作
制作 釘崎 康治
林  直哉

(長野県中信地区高校芸術鑑賞連絡会)
制作協力  其田 則男
取材協力 (株)テレビ信州
TBS
協賛 日本ビクター株式会社

劇団東京芸術座ウェブサイト http://www.tokyogeijutsuza.co.jp/

河野義行氏ウェブサイト http://www2k.biglobe.ne.jp/~ndskohno/

MEDIA LITERACY 2001年9月号 松本サリン事件から7年 演劇「NEWS NEWS」が失わない光
http://www.alc.co.jp/edunet/mdlit/mdlit2001/mdlit65.html

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最終更新日 2003/07/28