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名演5月例会 モスクワ・ユーゴザーパド劇場公演 

夏の夜の夢

作/ウィリアム・シェイクスピア 翻訳/堀江新二 
演出/ワレリー・ベリャコーヴィチ

4月1日 堀江新二さん「ロシア演劇の魅力を語る」

2月16日 ワレリー・ベリャコーヴィチ氏(演出)
エネルギッシュに演劇と愛を語る


堀江新二さん(大阪外国語大学教授・ロシア演劇)
ロシア演劇の魅力を語る 4月1日(火)名演事務所


堀江新二さん

堀江さんは、まずは簡単なロシア語講座をやっていただき、なぜロシア演劇に興味をもったのか、そのきっかけを語っていただきました。
 そのあと、ロシア演劇の魅力。スタニスラフスキーシステムのこと。「頭でっかち」になっている、日本の演劇の問題点。国立の演劇学校がない日本の演劇・文化政策への疑問。イヤホンガイドの利用法などなど、時間がないくらいの濃い内容のお話でした。
 堀江さんが、根っからの芝居好きだということが、言葉の節々から感じ取られるお話でした。

 

当日の資料です。

ロシア演劇の魅力 ユーゴザーパド劇場日本公演に向けて
              

     キーワードその1 迫真力のあるリアルな演技
     
1 演劇は俳優の芸術(1000人の客を震え上がらせた俳優…ほんまかいな?)

   *1898年創立のモスクワ芸術座とスタニスラフスキー
   *スタニスラフスキー・システムとは何か? 世界中の演技システムに…
   *あのジェームス・ディーンもマーロン・ブランドもマリリン・モンローも…
   *イギリスではロイヤルシェイクスピアカンパニーの学校も
   
2 そんな俳優を教育する国立の演劇大学(モスクワに4つもあるんやて!)
  *「文学的演劇」である目本との根本的な違い。
  *1912年小山内薫は役者になろうとした。
  *舞台の上で生きるということ=即興。   ああ、通訳泣かせ!
  *「舞台上で相手の言うことを聞いて、初めて返答心に浮かぶ」(坂田藤十郎)

     キーワードその2  観客の想像力に頼る非リアルな演劇空間

1 演劇って本当は嘘なんだ(当たり前や!)

   *スタニスラフスキーの弟子=大演出家メイエルホリド
   *モスクワ芸術座の「自然主義演劇」(後に「社会主義リアリズム」)に反発
   *第4の壁を取り去る演劇。歌舞伎から学んだ、様式的演劇・…「形式主義」として批判
   (メイエルホリド:1940年矯正収容所て銃殺)

2 ユーゴザーパド劇場の芝居(これが聞きたかったんや1)
   *ベリヤコーヴィチはメイエルホリドの孫弟子。
   *たとえば「ロミオとジュリエット」の決闘シーン
   *「検察官」の賄賂のお金が渡るシーン
   *観客が想像力で参加しないと成り立たない演劇
   
     キーワードその3 21世紀を演劇の世紀に!(戦争はやめてんか!)
     
    *ペリャコーヴィチと堀江の共通の合言葉=演劇はお祭りだ!
    *平和と反映を願うギリシャ民衆の祭り=演劇の原点
    *想像力とは何か=それはイマジン、「慮る」こと(相手の痛みを慮る精神を!)
    
3 『夏の夜の夢』見所(めっちや楽しいで!)

   *これまで述べてきたことの「集大成」のような芝居
   *夏祭りに行く気分で見る人には最高に面白い。
   *偽オペラ、偽バレエ、偽新劇など「芸達者」が一杯の「遊びの精神」
   *職人たち=藤山寛美のアドリブの世界(顔を見ているだけも面白い)
   *そして、何よりも想像力をフル回転させてください。
   
参考文献:「したたかなロシア演劇」(世界思想社)
    :「ロシア演劇の魅力」(東洋書店) ともに堀江新二著

以下お話の要旨

 日本の演劇は戯曲を重視して俳優は戯曲の指定通りに演技する「文学的演劇」の傾向が強いけれども、本来演劇は俳優の芸術であり、俳優は舞台の上で生きているので戯曲の通りにはいかず、即興性、俄があって毎回違うのは当然の事。勿論戯曲とかけ離れるわけではなく、そこに俳優の迫真力のあるリアルな演技があれば観客は感動するのだ。
 ロシアではプロの俳優は皆十歳位から舞台に立ち、難関を突破して演劇大学に入ってそこで5年間みっちり学んでからプロの俳優になるのだ。大学ではまず3年間は肉体訓練やら歌や楽器の訓練ばかり、その後演技の訓練になる。そんな俳優を教育する国立の演劇大学がモスクワには4つもあるとは、文化を援助しない我らが日本とは大きな違いだ。俳優も芸術家であり、ピアニストやバイオリニストなどのように小さい時からの訓練を経て成り立つものだ。日本では歌舞伎などの古典芸能と宝塚歌劇しかそんな訓練はしてはいない。素人でも劇団の養成所を出てすぐにプロの俳優になってしまう。俳優の訓練などしていなくても名前が知れていてちょっと顔の良いのがテレビにはたくさん出ている。ああ…。
  
 演劇は本当は嘘であり、それをまことしやかに本当らしく見せるには専門の訓練を受けたそんな俳優達の迫真力のあるリアルな演技が必要なのだが、リアルさを演技ばかりか演劇空間まで追及しすぎると、観客の想像力を排除してしまう。これは権力者の好むもの。観客も想像力で参加しなくてはならない。観客の想像力があれば、本当にそこにドアが無くても、そこにコップが無くても構わないのだ。演技がまことしやかであれば演劇空間はそうでなくともいいのだ。

 今回例会のユーゴザーパド劇場の芝居は「演劇はお祭りだ!」を合言葉に、お祭りに参加するような気分で見れば最高に面白い。俳優は観客に向かって話してくるから、我々観客も想像力―「慮る」、相手のことを考える心―を大いに働かせ、ほとんど何も無い空間で、照明と音楽に包まれて、芸達者な俳優達のリアルな演技を楽しもう。(文責 5月例会運営担当)


ワレリー・ベリャコーヴィチ氏(演出)
エネルギッシュに演劇と愛を語る


演出 ワレリー・ベリャコーヴィチさんを囲んで
通訳 堀江新二さん(大阪外国語大学教授) 2月16日(日)13:30 愛知芸術文化センターアートスペース

 
 モスクワ・ユーゴザーパド劇場の名演での公演は、『ロミオとジュリエット』(劇団東演と合同公演)、『検察官』に続く3弾目。今回演出のワレリー・ベリャコーヴィチさんが来日、岐阜・名古屋・豊橋の鑑賞会の共同主催で講演が行われました。                                   
 ベリャコーヴィチさんの講演は身振り手振りのパフォーマンスで、聞くというより観る講演といったほうがよいくらい楽しいエネルギッシュなお話しでした。通訳の堀江新二さんとの名コンビに参加者も大いにのりました。

 


ベリャコーヴィチさんと堀江新二さん。
手にしている写真は、昨年「人民芸術家」の称号を
受けたときの、プーチン大統領との記念写真。

ベリャコーヴィチ氏講演要旨

ユーゴザーパド劇場は、モスクワの郊外(南西部)にある劇団。
 劇団は今年で25周年を迎えた。芝居を始めたのは27歳だがその前から少年たちと芝居をつくってきて30年近く経った。30年も経つと入れ替わりが出てくるのが普通だがみんな残っている。それに新しい人たちが入ってきているので子供も俳優になっている。劇団員の子供たちも37人になっている。
 日替わりで35本の作品をを公演しており、レパートリーが多いということでギネスブックに載った。
 

30年も経つと私たち流の演劇が形作られていく。俳優たちの気心を知っているので、最初から議論なしでも芝居づくりには入れる。
 私たちの劇団は、ロシアの民衆演劇の伝統を受け継いでいる。いわば「広場のパフォーマンス」だ。特徴としては、まず舞台装置はない。あるのは俳優の身体だけ、大道芸はそこから始まる。一番大切なのは目だ。何もなくても俳優がいて観客を引きつけるものがあればそれでいい。ともに創造するのは観客だ。一番大切なのは俳優と観客だ。目と目で接触する。それが映画やテレビと違うところだ。観客の目に向かって話せ、と俳優にいつも言っている。何の装置もない。それが民衆演劇の伝統だ。俳優は立って演じている。人間は興奮すると立って話をする。立っているほうが観客とのコンタクトがとれる。座るとリズムが切れると思う。
 演出上の特徴として、沢山の音楽を使う。

 なによりも大切なのは「愛」だ。「愛・愛・愛」…。音楽があり誰でもわかる楽しい芝居を作っている。「シェイクスピア」も装置もない民衆的な芝居であり、私たちの目指している演劇と近い。
 ペレストロイカ以降、自由に何でもやっている。それ自体はすごくいいことだが、ロシアではどんなものでもいいという「自由」の風潮が広がっており、私は極端なことは嫌いだ。モスクワには劇場が30から180にまで増えた。
 日本の作品はレパートリーには入っていないが、いま三島由紀夫の『サド侯爵夫人』を次のレパートリーに考えている。
『夏の夜の夢』はどんな芝居かと一口で言えば、「音楽がある楽しい愛にあふれた芝居だ」
言葉がわからないからといってもイヤホンをはずすことも大切だ。言葉で芝居を観てほしい。イヤホンで観るのではなく。原作を読んだり、人間関連などは事前に知っていたほうがいいのではないかと思う。(文責 5月例会運営担当)

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