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名演8月例会 加藤健一事務所公演

『セイムタイム・ネクストイヤー』

8月 9日(木)6時30分
  10日(金)1時30分・6時30分

名古屋市民会館中ホール 地図       名演の入会方法はこちら

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 カリフォルニアの海辺に建つコテージで、ふとしたことで出逢ったドリスとジョージ。あっという間に意気投合、それぞれ幸せな家庭を持つ二人にとって、これが初めての浮気であった。ドリス24歳、ジョージ27歳。

 ただ1度きり、…となるハズが、この日以来、一年に一度、同じ日に同じ場所で、秘密のデートが続いていく。

 そして25年。25回目のデートに訪れた二人に待っていた結末とは…?

1951年2月のある日、場所は、北カリフォルニアの海辺に建つスペイン風コテージ。ものがたりは、神様のいたずらによって、ジョージとドリスが、偶然出会ってしまったことではじまります。この時、男性ジョージは、27歳、子供が3人いて、会計士をやっています。一方、女性ドリスは、24歳、同じく子供が3人いる母親です。このように、お互い幸せな家庭を持つ二人ですが、1回きりの浮気のつもりで、情熱の夜を過ごしました。翌朝、後ろめたい気持ちを引きずりながらも、意気投合してしまった二人は、この後、「セイムタイム・ネクストイヤー(来年の今日もまた――)」毎年1度、同じ場所で、逢瀬を繰り返し、1975年まで25年間続くこととなります。
 この25年の間に、最初は、ちぐはぐな会話しかできない2人でしたが、危機的な状況をも乗り越え、お互いが、相手の夫や妻、子供のことまでも率直に話し合えるようになり、次第に、かけがいのない関係が築かれていきます。そして、25年後の1975年2月のある日、妻を失ったジョージは、ついに意を決し、ドリスへのプロポーズを決行します。そして、感動的な幕切れへとつながっていくのです。


 この舞台は、休憩を挟み、前半3場、後半3場で構成され、場と場の間には、ほぼ5年の歳月が流れ、1975年まで描かれています。このように、5年ごと時を刻んで進行しますので、時代背景や2人状況の変化が、わかりやすく感じられます。学歴のなかったドリスが、子育てをしながら、大学に通い、自立した女性に成長していく姿や、ジョージが、性的問題を抱えたり、息子をベトナム戦争で失ったりして、苦悩する姿が描かれています。まさにアメリカという国家の有様ともダブって見えてくるのです。こうした社会的背景を巧みに折り込ませ、作品に深みを持たせています。
 この作品は、1年に1回のデートが25年間も続くという現実ではありえないようなストーリーで構成された不倫コメディです。しかし、現実離れしたものだと単純に割り切れない不思議な魅力が隠されています。不倫というフィルターを通して、理想の夫婦像が、おぼろげながら見えてくるのです。不倫相手に向かって「愛している」といいながらも、その一方、自分の幸せな家庭とは、完全に切り離すことのできない自分がいるのです。不倫が、逆に自分のポジションを見直すきっかけにもなっています。
 特に、あるべき夫婦像が、多様化してきている今だからこそ、この作品が語りかけるものに、なぜか共感できるものが多くあるのではないでしょうか。たとえば、不倫先に子供から歯が痛いとかかってきた電話にあたふたするジョージの姿、ドリスの陣痛がはじまり出産しそうな様子に動揺するジョージなど、とてもコミカルでおもしろい場面が展開していきますが、「ただ笑って済ませていいのか」と思わせるものがあります。
 また、クライマックスで展開されるジョージからドリスへのプロポーズですが、はたして、これをよくやったと見るか、遅いととらえるか、すべきではないと感じるか、いろいろなな見方が出るのではないでしょうか。いずれにしても、観客の皆さんが、ジョージやドリスを自分に当てはめ、その立場から理想の家族とは何か、理想の夫婦とは何かということを、ジョージやドリスと一緒に追いかけてみてはいかがでしょうか。きっと、今までとは違った何かが得られることとなるでしょう。
 

 作者であるバーナード・スレイドは、カナダ生まれですが、カリフォルニアを生活拠点に、最初、俳優としてスタートします。その後、プロデューサーなどを経て、作家活動を行なうこととなります。不倫を重ねながら、25年にわたる七夕デートをするというアイデアは、彼が、妻と北カリフォルニアの魅力的なコテージで過ごしたときに思いついたといわれています。これが台本化された「セイムタイム・ネクストイヤー」は、1975年3月13日ニューヨークのエセル・バリモア劇場で柿落としとなり、1978年9月3日まで1444回の上演を記録しました。
 一方、日本では、加藤健一事務所が、1985年以来何回か再演しているヒット作品で、今回もまた、加藤健一と高畑淳子のコンビで上演されます。他にも、小川真由美・橋爪功のコンビ、小柳ルミ子・角野卓造のコンビでも上演されており、それぞれ好評だったようです。今回の加藤・高畑コンビは、まさに当たり役で、熟練した演技で、観客を魅了する舞台が期待されます。加藤健一は、各舞台で好演しており、この作品では、ジョージの苦悩をうまく引き出すことが期待されます。また、高畑淳子は、「女たちの十二夜」のサー・トービー役が強く印象に残っています。非常にパワフルでしかもコミカルな熱演をした彼女が、ドリスをどう演じるかが楽しみです。
(A16-13 川口正人)

キャスト
ジョージ……………加藤 健一
ドリス………………高畑 淳子

スタッフ
作………バーナード・スレイド
訳……………………青井 陽治
演出…………………宮田 慶子
美術…………………石井 強司
照明…………………五十嵐正夫
音響…………………松崎 俊章
衣裳…………………加納 豊美
舞台監督……………高橋 春樹
         青林  天
制作…………………阿部 悦子
   中島久仁子 柴田  薫
   新保 聡子 北村 浩子
   角 英吏子

加藤健一事務所ウェブサイト http://homepage2.nifty.com/katoken/


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スケジュール

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最終更新日 2001/09/29